【感想】女神の勇者を倒すゲスな方法がギャグだけで終わらずお話もしっかりしたものだった
かんたん評価
オススメ度:★★★★☆
いつも通り学校に通っていた高校生・真一は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。しかも魔王の元に!
なんでも魔界にはクソまずい食べ物しかなく、娘に美味しいものを食べさせたかった魔王は食糧探しに地上に出てきたところ、侵略しに来たと勘違いした勇者たちが襲い掛かって来たのだとか。
何度倒しても女神の加護によって復活してくる勇者に辟易した魔王は、知恵者として呼び出した真一に状況の解決を望む。
魔王の期待通り勇者撃退に乗り出すことにした真一だったが、なんとその方法は魔族すらドン引きするえげつない方法だった。
・勇者側ではなく魔王側に召喚される
・知略で敵をハメ倒す系主人公
・意外と深くてダークな世界設定
・終盤ちょいシリアス
・ハーレム要素有り
正直ストーリーには一切期待していませんでしたが、下手な物語重視の作品よりも面白くてびっくりしました。
笑えて感動できる、そんな素敵な作品です!
全6巻と短めなのもグッド!
以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。
こんな作品
あらすじ
「勇者共をどうにかしてくれ!」いきなり剣と魔法の世界に召喚された外山真一に召喚主の“蒼の魔王”は土下座で頼み込んできた。魔王は可愛い娘のために、美味しい食料を求め人間界に来ただけで、人類に危害を加える気はないらしい。なのに殺しても蘇える勇者達に毎日襲撃され困っていたのだ。せっかく異世界に来たんだし、と真一は勇者撃退に乗り出すが、彼の策略は魔族すらドン引きするものばかりで―!!魔王の参謀となった少年の勇者攻略譚、登場!
ドラクエをはじめ、ゲームではよくある倒しても倒しても復活してくる勇者という設定。
これが敵に周るとなると非常に厄介なのは想像に難くありません。
じゃあどうすれば無限に復活してくる勇者を倒せるかと言えば、そりゃもう挑戦したくなくなるよう心を折るしかないですよね。
ってことで勇者を倒すための方法を考えるのが主人公の役目です。
ゲスな方法とは言っても「これは心折れるわw」と笑えるレベルであり、ガチでドン引きするような方法ではありません。
また、この世界には蘇生魔法なるものが普通に普及されているため基本的に死人が出ません。
悪く言えば温い話ですが、気楽に読める安心仕様です。
ここが面白い
知略で戦う主人公
知略で戦うというと戦記ものを思い浮かべる人が多いんじゃないかと思うのですが、この作品の設定上ただ相手を倒せばいいというものではないため、一般的な戦記ものの戦術が意味を成しません。
というか、武力だけならぶっちゃけ魔王様一人で人間を殲滅できるんですよね…。
“いかに相手に戦う気を無くさせるか”というのがこの物語のキモになります。
ギャグっぽい倒し方からじわじわと追い詰めていくものまで色々あるのが良いですね。
潔いのが5巻(6巻はエピローグ的なものなので)という短い巻数で終わらせているところです。
この手の奇抜性の高い戦術というのはかなり早い段階で弾が尽きてしまいがちです。
本作は読者が飽きる前、つまりはネタが尽きる前にしっかりと話しを畳んでいるために、「面白かった」という印象で読み終えることができます。
意外とダークで深い設定
この作品のタイトルとかあらすじを読む限りではどう見てもネタ作品であり、正直最初は大して内容に期待をしていませんでした。
まぁ実際に冒頭もネタ感かなり強めですしね。
ところが読み進めていくと意外にも作品の世界についてよく考えられていることがわかります。
1巻の時点で何度でも蘇ってくる女神の勇者について疑問を持ち始める主人公。
そもそも女神とは何なのか?
人族と魔族と魔物の違いは?
なぜ魔族は地下世界に追いやられている?
エルフはなぜ美男美女ばかりなのか?
などなど、作品によっては「そういうものだから」で済ませがちな点についてもこの作品なりにしっかり回答を出しています。
むしろここまで世界観についてしっかりと答えている作品の方が珍しいじゃなかろうか。
しかもそれをたった6巻で語りつくしています。
そしてこの世界の秘密が判明していくにつれて、それらがなかなかに重い事実を含んでいることがわかってきます。
まぁこの重い展開については賛否あるとは思います。
ギャグ読みに来てるのにシリアス展開なんかいらんわという人もいるでしょう。
ただ、これらの設定については後付けで考えられたわけではないということは本文を読めばわかります。
なぁなぁで済ませず、それでいて説明チックにもならずに世界を説明している点は評価したいです。
ここがちょっと気になる
終盤がシリアス展開
基本的にはコメディ路線で進む本作ですが、4巻途中から5巻にかけてはシリアス路線に向かっていきます。
世界の秘密とか女神の秘密とかに迫っていくため仕方ないと言えば仕方ないのですが…。
個人的にはかなり楽しめましたが、ギャグを期待している人にとっては期待外れな展開になってしまうのかな?
まぁ6巻はエピローグ巻となっているため、そこで再度楽しい気持ちになってもらえればなと。
終わりに
5巻+1で完結を迎えた本作。
余計な内容は省いたうえで伏線など必要な情報はしっかり回収しており、読了後の感想は非常に良いものでした。
6巻だけは無理矢理伸ばした感じがあり、実際にあとがきからも出版社側からの要望で生まれたような旨が書かれています。
まぁでも『女神の勇者を倒すゲスな方法』という作品のくだらなさが帰ってきているし、この手の世界を救う系の話では何かとなぁなぁに済まされがちな“その後”を描いているのは、ある意味この作品らしいなという感じはしました。
物語的には5巻で完了しているので、その先を読むかどうかは自分で選んでいいと思います。
短くてしっかりと完結している作品を求めている人にはオススメの作品ですよ!