【感想】本好きの下剋上は自己中主人公の私すごいでしょ作品

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かんたん評価

オススメ度:★☆☆☆☆

  • こんな作品

  • 本が好きすぎた女子大生・麗乃は、大地震によって本に埋もれて死んでしまった。
    とある平民の家にマインとして生まれ変わった麗乃だったが、そこはなんと本が貴重過ぎてとても入手できないような中世レベルの世界だった!
    なんとかして本を手に入れたいマインは、いっそ自分で本を作ろうと奮闘し始める。


  • この作品の特徴

  • ・内政チート、魔力無双による成り上がり系
    ・他なろう作品に比べるとややリアル寄りの中世描写
    ・主人公がかなり性格悪い
    ・主人公は言うほど本好きじゃないし下剋上もしない
    ・山なし谷なしオチなしの淡々と進む物語


  • 一言

  • テンプレなろう作品の女主人公版です。
    主人公の性格が巻を進める毎に性格が悪くなっていくので、序盤で主人公を好きになれる人だけが読み進めましょう。



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    以下、結構なネタバレが含まれますのでご注意ください。

    こんな作品

    あらすじ

    幼い頃から本が大好きな、ある女子大生が事故に巻き込まれ、見知らぬ世界で生まれ変わった。貧しい兵士の家に、病気がちな5歳の女の子、マインとして…。おまけに、その世界では人々の識字率も低く、書物はほとんど存在しない。いくら読みたくても高価で手に入らない。マインは決意する。ないなら、作ってしまえばいいじゃない!目指すは図書館司書。本に囲まれて生きるため、本を作ることから始めよう!

    物語は全部で五部に分かれており、ストーリーが進むごとに平民から巫女へ、巫女から貴族へと成り上がっていきます。

    めっちゃ長いので気に入ればかなり楽しめると思います。

    ここが面白い

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    他とは違う中世描写

    例にもれず小説家になろうにありがちな中世ヨーロッパ風の異世界に転生するお話です。
    ただし、その描写はいつもとちょっと違ったもの。

    糞尿は窓から投げ捨てたり、識字率は滅茶苦茶低い…というか一般人はほぼ0だし、人々は日々の生活でいっぱいいっぱい。

    現実の中世ヨーロッパにはあるが数多くの作品では省かれがちな汚かったり苛酷だったりとマイナスな面も描写しているという非常に珍しい作品です。


    …ただ、リアリティがあるから面白くなるかと言われるとそんなことはなく…。
    日用品を自分たちで容易する辛さや冬越えの辛さなんかは主人公の物作りに関わってくるし作品に味を出しているので良いのですが、糞尿や家畜の屠殺描写とか必要だったかな?
    あぁ、トイレの水汲みを配下にやらせるっていう場面はありますね。


    リアリティがあれば良くなるとは限らないということを教えてくれる貴重な作品でした。

    行動による波及性については結構考えられている

    この作品の序盤の展開は、


    何か問題を見つける

    マインが何かやろうとする(やらかしてしまう)

    大人に「そんなことしたらとんでもないことになる」と叱られる


    という流れの繰り返しになります。
    例えば、第二部にて自分たちで作ったレストランの給仕をどうするかという問題に対して、孤児院の者の採用を検討していました。
    しかし、神官長から

    ・後見人はどうするのか
    ・孤児院内での給与格差が出てしまう
    ・外の世界に興味を持ったらどうするのか

    などなど、ごもっともなことを色々言われてしまいます。
    こうした現代人が考える対策について、現地だからこそ起きてしまう波及性について述べられているのは感心しました。

    ここがちょっと気になる

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    主人公が好きになれない

    この作品を好きになれない要因は間違いなく主人公のマインを好きになれないということに限ります。

    性格が悪い

    わざと性格が悪く描写されているとか、悪役として書かれているならいいんです。
    けれどこの主人公、特に悪気なくクソみたいな性格なので非常に不快感が強い。というか作者自身が性格悪いと思っていないところが余計に質が悪い。


    中身はもうすぐ社会人になろうという22歳の女が、見るからに貧しくて生活カツカツな家なのにやれ本が無いと喚き散らし、病弱で自分では動けないけれど身体を洗いたいからと6歳の姉にお湯を用意させ拭かせたり、髪を洗わないのは気持ち悪いと貴重な果実を洗髪に使うという贅沢をしたり。
    その上、家の手伝いには文句たらたら。挙句は過酷な冬支度の手伝いを放棄して紙作りに没頭するなどなど。

    金持ち貴族の家庭ならそれも許されるのかもしれませんが、子供は労働力とされていた時代の貧乏家庭であるにも関わらず、なぜこんな病弱な上にわがままな子供を生かしているのか、さっぱりわかりません。


    Web版の前書きには“※最初の主人公の性格が最悪です。”と注意書きがありますが、初めどころか物語が進んでいくにつれて自己中さが増していきます。

    ムカつく相手だけど自分の体裁を保ちたいときは取り巻きの者が代わりに制裁or説教。
    貴族の嗜みや習慣はやりたくないヤダヤダばかり。
    そんなマインが側仕えに「働かざる者食うべからず」とか言い出すのは失笑ものです。


    子供時代の性格が悪いと言えば無職転生のルーデウスも前世はクソ野郎でしたが、あれは作者的に自覚的に書いているものだし、物語が進むにつれて改心していくというのが魅力でした。

    しかし、この作品では改心するどころかどんどん悪化していくという…。


    正直ここまで無自覚に性格の悪い主人公は見たことがないというほど。

    上っ面だけの本好き設定

    この作品を読んでいて真っ先に思うのが、「こいつ本当に本好きなのか?」というところ。

    本好きでありながら好きな本の1冊も話に出てくることはない。
    NAISEIをするにしてもかつて読んだ本を参考にすることはない。
    中世ヨーロッパ風の景色を見てもかつて読んだ本を思い出すこともない。
    というかそもそも中世レベルの街並み見たら本も紙も超高級品なことくらい予想つくだろうにそれもわからない。


    正直言えば本を読んだだけでジャンル問わずあれもこれも作り方を知っているというのはかなり無理があるのですがそこはまぁファンタジー。
    でも、そこまで読み込んでいるはずなのに結構な頻度で知識が抜けていたり本が人格形成の糧になっていなかったりと違和感が凄い。
    そもそも「本を読むのは好きだけど次の本を読む頃には前の本の記憶は忘れちゃう」と作中で述べているのでもう矛盾だらけなんですが…。


    挙句の果てに本が読める環境に成りあがったにも関わらずやっぱり本を読む描写はほとんど入らない。
    これではどう読み込んだところで主人公は大して本好きじゃなかったとしか思えません。

    何をやりたい物語かわからない

    本を読むために頑張る

    それが本作の目的というかテーマかなと思っていました。
    ところが第一部からかなりおかしい方向に話が進みます。
    「本が無ければ作ればいい」と。


    え? 自分で本作ってどうすんの?


    そもそも本を読んだことはあっても書いたことのない人がどうやって中身を用意するのだろうか。
    今まで読んだ本の中身をまるっと覚えているとか?
    それにしたって読んだことのある本を作ってどうするのか。
    教養を広めたいわけではなくあくまで自分が読みたいために作るんでしょ?
    さっぱりわかりません。


    これが第二部になると神殿の図書館を閲覧できる地位に就くことができ、あっさりと当初の目的は果たされてしまいます。
    仕事もあるけれど念願の本を読める環境です。

    ここでもう物語終わりでいいじゃんと思うのですが、ここでまだまだ序盤。孤児院の保護だとか側仕えの話だとか、挙句イタリアンレストランの運営だとか本が関係ない話ばかりが繰り広げられていきます。
    第一部でやっていた本作りの話が思い出したかのように合間に入ってきて、最早何がメインなのかわかりません。


    これが第二部だけならまだしも、第三部、第四部と進んでいくほど本とは離れていき、主人公sugeeな物語が繰り広げられていきます。


    お前結局全然本読んでねーじゃん!


    これは本好きによる物語ではなかったのだろうか…。

    まるで主人公のための世界みたい

    創作物というのは大なり小なり主人公のための要素というのが入るものですが、この作品においてはあまりに主人公に都合が良過ぎて違和感を覚えます。

    病弱でも可愛がってくれる家族

    男兄弟の多い家庭だと満足な食事も難しい、6歳の姉ですら毎日森に出かけて食材や道具作りの素材を取りに行くような時代。

    そんな中で主人公のマインは病弱で街の門までもまともに歩くことが困難で、頻繁に熱を出して体調を崩す。
    体調が良くてもあれは嫌だこれがやりたいとわがままばかり。


    どう考えても処分対象ですね。
    どうしてマインが生きていけたか、不思議でなりません。

    やたら特殊な知識のある5歳児

    主人公が現代の知識を使って活躍するというのはなろうでは非常にありふれた設定ではありますが、この手のものは大抵が冒険者だったりそもそも人間社会じゃなかったりと発言が受け入れられる土壌が用意されていたりします。
    ところがこれがわずか5歳の少女となるとかなり無理があるでしょう。

    テレビはもちろんのこと新聞もない。本は高価過ぎて一般市民は一生見ることもない。
    病弱で家にこもりがちなマインは旅の者と会う機会もない。

    こんな状況で一体どうしたら誰も見たことのないシャンプーを作ったり粘土板を作れたりするでしょうか。


    どう考えても危ない儀式にでも手を出してしまった異端ですし、魔女裁判まっしぐらです。


    こんな状況でもマインのおかしさに気付いたのはルッツという少年たった一人。


    そして商人はこんな子供相手にもしっかりと契約してくれます。
    どう考えてもおかしい。
    わずか5歳の病弱な子供が多種多様な知識を持っているとわかったら無理矢理吐き出させるか誘拐案件でしょう。

    結局魔力で無双

    物作りでコツコツ頑張っていくのかと思いきや、唐突に魔力がうんぬんの話が出てきてファンタジー色が強くなります。
    そして主人公の魔力は非常に強力なもので、うっかりブチ切れるようなら漏れ出た魔力による威圧で神殿長ですら死にかけてしまいます。


    最終的には一人で国相手にどうにかしてしまえてもう何がなにやら…。

    終わりに

    ここまで長い物語を書ききったというのは十分尊敬に値しますし、この作品を好きな人がいることはわからないでもないです。

    とは言えいくらなんでも評価が高すぎじゃないかな? 悪評があまりに少ないな?
    …と思っていたのですが、どうもこの作品、狂信者が活発なようですね。
    恐ろしや。


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