【感想】ひげを剃る。そして女子高生を拾う。は重い設定とは裏腹にほのぼのとした内容

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かんたん評価

オススメ度:★★☆☆☆

  • こんな作品

  • 5年片想いしていた相手にフラれて、同僚とヤケ酒をした帰り道。
    路上にうずくまる家出の女子高生を勢いで拾ってしまい始まる同居生活。
    年上にしか興味のないサラリーマン・吉田と、身体を売って生活をしていた家出JKとが織り成す歪な恋愛物語。


  • 作品の特徴

  • ・社畜と家出JKとのドキドキ?同居生活
    ・ヒロインは非処女
    ・犯罪が犯罪じゃなくなる優しい世界
    ・重い設定の割りにほのぼのとした内容


  • 一言

  • 非処女ヒロインというラノベらしからぬ設定が特徴の作品です。
    処女厨は全力で避けてください。

    ところでこの本のタイトルは正しくは『女子高生を拾う、そしてひげを剃る』ではなかろうか。ひげ剃るの女子高生拾った後だし。

    以下、ネタバレがそれなりにあるのでご注意ください。

    こんな作品

    あらすじ

    5年片想いした相手にバッサリ振られたサラリーマンの吉田。ヤケ酒の帰り道、路上に蹲る女子高生を見つけて―「ヤらせてあげるから泊めて」「そういうことを冗談でも言うんじゃねえ」「じゃあ、タダで泊めて」なし崩し的に始まった、少女・沙優との同居生活。『おはよう』『味噌汁美味しい?』『遅ぉいぃぃぃぃぃ』『元気出た?』『一緒に寝よ』『…早く帰って来て』家出JKと26歳サラリーマン。微妙な距離の2人が紡ぐ、日常ラブコメディ。


    身体を差し出す代わりに泊めてもらうということが当たり前になってしまっていた女子高生・沙優。そんな彼女に対して本気で怒ってくれて、何を求めるでもなく世話を焼いてくれるサラリーマンの吉田。今まで無かった優しさに触れてどうしていいかわからなくなる沙優。
    そんな二人が繰り広げるもどかしい恋愛物語。
    一方、吉田を振ったはずの後藤は吉田に気があるような思わせぶりな態度をし、更には出来の悪い後輩・三島までもが加わってきて…。

    ラブコメと書かれてますけど、コメディっぽさはあまり無いです。
    というかこの設定でコメディやられても笑えない。

    ここが面白い

    社会人とJKの微妙な距離感

    保護者目線から世話を焼いてくれる主人公の吉田。
    無条件に世話を焼いてくれる吉田に戸惑いを見せながら、徐々に心を開いていく沙優。

    この手の話はマンガでは偶に見ますが、ラノベではかなり珍しいですね。
    こうやって初めは意識していなかった二人が徐々に距離を縮めていく作品というのはそれだけで魅力に感じてしまいます。

    沙優が吉田に惹かれているのがわかる一方で、吉田の方も同居生活をなんだかんだと気に入りかけていく。そのまま恋愛に発展していってしまうのか、あくまで保護者と被保護者の関係のまま沙優は巣立って行くのか、結末がわからないところも非常に気になります。

    ここがちょっと気になる

    誰も問題視しない家出少女誘拐という事実

    本作のメインヒロイン・沙優は家出した女子高生です。しかも、既に家出を始めて半年。
    例え親が捜索願いを出していなくても、高校を半年も休んでいたら間違いなく警察沙汰です。ニュースにもなるでしょう。

    まぁそれでも家出できちゃうのはラノベらしいっちゃらしいのですが、そんな家出JKを保護しているという事実に対する周りの反応があまりに主人公寄りなことが気になります。


    前提として、保護者の同意なく未成年者を自宅に泊めることは未成年者誘拐となり犯罪です。
    ということで本作の主人公は現在進行形で犯罪に手を染めている人間なわけですが、それに対する周りの認識があまりに軽すぎる。
    どれくらい軽いかというと、親戚の女の子がちょっと家に転がり込んできたくらいの軽さです。


    いやいや、それバレたら逮捕だし社会的に死ぬからね!


    というか、後輩ちゃんや女上司も既にこの状況を把握しちゃってるし、主人公の手助けもしちゃってるから犯罪ほう助で共犯者ですよ。
    登場人物ほとんど犯罪者とかすごいな!

    ご近所さんが通報しないどころか、沙優がコンビニバイトまで始めちゃうのは流石にそりゃないだろと絶句。


    個人的には、こう、JKを匿うという社会人終了レベルのNG行為を、それでも沙優の心の傷のためにどうにかこうにかやりくりをするのかなーとか思っていたのですが…。

    あるいは「保護者に連絡したらなんやかんやあって一時的に預かることになった」みたいなゆるい展開にすれば、インパクトは薄まるけどそれはそれでほんわかした物語が楽しめたと思います。


    いくら小説とは言え、犯罪は犯罪として書いてくれないと。

    急にラノベっぽくなる恋愛要素

    いやこれラノベだろって言われてしまうとそれまでなのですが…。
    ラノベとは思えない設定から始まり、家出JKと年上好き社会人の、スタート地点では成立しなそうだけどどうなるの!? みたいなのを期待していたので、

    一度は振っておいて実は主人公のことを好きな女上司

    とか

    実は主人公のことが好きな無能を装った優秀な後輩ちゃん

    とか、なんか急にその辺のラブコメにありそうな展開が湧いてきます。
    別にこういう描写自体が嫌いなわけではないのですが、この作品にはそういうの求めてないっていうか。
    この作品のテーマ的に主人公がモテるかどうかってどうでもいいじゃん?
    なんか、急に凡百なラノベになってしまった感じです。

    終わりに

    ヒロインの境遇と家出少女を拾うという犯罪行為についてどこまで見ないふりをできるかがこの作品を楽しめるかどうかに関わってくるかと思います。
    文章としては読みやすいので、これらの問題さえ除けばまぁその変に転がってるラブコメレベルの内容は約束されています。

    しかし、一向に触れようとする気配のない家出問題、挙句コンビニバイトを始める沙優には絶句。

    3巻の最後数ページにしてようやく家出について進展がありましたが、正直遅すぎるよ…。