【感想】インフィニット・デンドログラムはワクワクと情熱を思い出させてくれる

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かんたん評価

オススメ度:★★★★★

  • こんな作品

  • プレイヤーの性格・行動に応じて独自の進化をするシステム<エンブリオ>が売りのダイブ型VRMMO<Infinite Dendrogram>。サービス開始から1年半遅れで参加した椋鳥玲二が出会ったのは、本物の人間と区別がつかないほどリアルな生活を送るNPC“ティアン”だった。
    「王族だろうと一般人だろうとティアンは普通に死に、それでも世界は回る」

    ティアン達にとってはどこまでもリアルでありながらプレイヤーにはゲームであることを強調するような歪なシステム。
    どこか違和感のあるこの世界は、果たして本当にただのゲームなのか…。

  • 作品の特徴

  • ・フルダイブ型VRMMOが舞台
    ・苦難に立ち向かう熱血系主人公
    ・涙ポロリの物語も
    ・主人公以外の活躍もたくさん


  • 一言

  • ゲームをゲームと割り切れない主人公が、たった1度の生しか許されないNPCのために戦う熱血ストーリーです。
    とにかくめちゃくちゃ熱いのでそういうの好きな人はぜひ!
    あと、単純にゲームとしても本当にあったら面白そう。

    今ならKindle Unlimitedに入ると1~3巻が無料で読めちゃいます!


    以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。

    こんな作品

    あらすじ

    各プレイヤーの行動や性格、プレイスタイルによって独自に能力が進化するシステム<エンブリオ>。人と間違うような、確かにその世界に息づくNPCたち<ティアン>。そんな夢のようなシステムを備えたダイブ型VRMMO<Infinite Dendrogram>は、瞬く間に一大ムーブメントとなって世界を席巻し、数多くのユーザーがこのゲームを楽しんでいた。大学受験を終えて東京で一人暮らしを始めた青年・椋鳥玲二もまた、受験勉強の終了を記念して、かねてより兄に誘われていた<Infinite Dendrogram>を起動する――。

    イメージはSAOアンダーワールドが近いでしょうか。
    限りなく人に近い思考を行うNPC“ティアン”は、けれどもその世界をゲームだとは思っておらず、彼らにとっては紛れもなく<Infinite Dendrogram>の世界がリアルです。死んでしまえば二度と蘇れません。
    そんな世界でプレイヤーにドンパチやらせて、超級エンブリオを増やそうとする運営。
    果たして運営の目的とは…?

    ここが面白い

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    とにかく展開が熱い!

    この作品の魅力は何と言っても心湧きたつ熱い展開にあると言っていいでしょう。
    その身を危険に晒している者の前に立ち、明らかに自分よりも格上の存在に戦いを挑む。
    それはまるで少年マンガのようで、読者の心を震わせます。

    この作品が良いのはただ熱いだけの主人公ではないというところですね。
    主人公の玲二は普段はどこか抜けているというか、少々迂闊な部分はあるもののいたってまともなプレイヤーです。
    それが、ここぞという場面(ティアンの命に係わるとき)で立ち向かうからこそ面白いんだと思います。
    主人公に嫌味がないっていうのも作品を楽しむのに重要ですよね。

    優遇されているようでされていない主人公のバランス

    こういうゲーム系の物語ではたびたび軽視されがちですが、ネットゲームにおいてバランスは超大事! 特に露骨に特定のプレイヤーを優遇するのはゲーム経験者からするとクソゲーとしか思えません。
    そんな中、この作品は物語の主人公らしい優遇をされつつもチート一歩手前、決してゲームバランスを著しく崩していないというところにあります。
    かなり厳しい回数制限のある攻撃吸収と、受けた攻撃を返すリベンジ技というジャイアントキリングに特化したスキルは、物語としては輝くものの普段使いにはあまりに不便で、おまけに素早い相手には圧倒的に不利など相性の良し悪しがモロに出てしまう構成として描かれています。

    そうは言っても主人公強すぎじゃね? と思わなくもないですが、そう思えるのは序盤の戦闘だけです。作中のトップランカーたちは主人公では文字通り手も足も出ないほどの強者。例えばスピード特化した超級からの攻撃にはスキルの発動すら間に合わないかったりします。

    というかむしろトップランカーを強くし過ぎちゃった感があり、そっちの方が大丈夫かなと。物語序盤で出てきた超級と最新刊で出てきた超級でもう別物の強さな気がするけど。

    個性豊かで魅力的なキャラクター

    主人公の兄に始まり仲間になるルークやマリー、それにライバル(?)のユーゴーや“超級”のフィガロなど数多くのキャラクターが物語に関わってきます。それらのキャラクターのまぁ個性的なこと。
    この手のファンタジー作品は武器や戦闘スタイルにどうしても似たようなキャラが登場しがちですが、この作品のキャラクターに他にはない強い個性があるのには2つの理由があると思います。

    一つはしっかりと個々のキャラに物語を作っていること。
    どんな家庭環境でどんな悩みを抱えていて、どんな想いでこのゲームを始めたか。そうしたキャラ独自の物語がしっかりと用意されていることから、作中での性格に取って付けたような感じがしないんだと思います。

    もう一つは、エンブリオという無限の可能性を秘めたシステムがあるということ。
    そのキャラの特性に合わせて無限の可能性を秘めたこのゲームのおかげで、RPGにありがちな武器という枠を外れ、そのキャラに合った自由な戦闘スタイルが確立されています。

    これら2つの要素が合わさることで、この作品独自の非常に魅力あるキャラクターが活躍します。

    ここがちょっと気になる

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    伏線の張り方がいまいち

    この作品で唯一残念だなと思うのが、伏線の張り方が上手くないなぁというところ。
    “本命は西”だとか“鬼の心臓は腹の中”といったように、あまりにもあからさま過ぎるフラグをポンと建ててきます。
    これはいくらなんでも露骨すぎます。後者に関しては何が起きるかからどうやって倒すかまでまるわかりじゃないですかー。

    これはやり過ぎたと思ったのか今度は習得したスキルや得た情報を“アレ”とか“コレ”とかの指示語や“■”や“…”の文字潰しで露骨に隠す方向にシフトしていきます。それはそれでいくらなんでも隠し過ぎでは…という気が。

    終わりに

    正直「またVRMMOかよ」と最初は全く期待していなかった本作ですが、いざ読んでみたら滅茶苦茶面白くて、読んでいなかったことを軽く後悔するほどでした。
    熱いバトル、頼りになる兄貴、似たような想いを抱えながらも道を違えるライバル。少年マンガ好きならきっとドはまりするのではないでしょうか。