【感想】城なし城主の英雄譚は王道なストーリーの物語

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かんたん評価

オススメ度:★★★☆☆
遥か昔に作られた遺跡・古城の主となり、自分だけのクランを設立すべく冒険者としての旅に出た少年の物語。

どこかで見たようなキャラクターたちにより、どこかで見たようなストーリーで繰り広げられる王道作品。
何かの二次創作を疑ってしまいかねない既視感がありますが、問題はオリジナルの設定があまり深く考えられておらずツッコミどころに溢れているというところ。

とは言えここまで王道一直線の作品も最近は珍しいため、そういうの好きな人にとってはいいかも?

以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。

こんな作品

あらすじ

自分たちの城を持つことこそが一流の冒険者と言われる。
いくつもの城を持ち、クランを作り上げた育ての親である義姉に憧れ、少年・レオンは義姉の元を離れて冒険者として旅立った。

まだ誰にも攻略されていない小さな古城を見つけたレオンはソロで攻略をもくろむが、上手くいかずに何度も失敗を重ねる。
そんなある日、酒場で魔導士の少女・リシアと獣人王・ヴェルナーのいざこざに巻き込まれてしまい、挙句酒場の修理費まで負担させられてしまうレオン。
負担金を回収すべく騒動の発端であるリシアを追いかけたレオンだったが、肝心のリシアは無一文だった。
そこでレオンは負担金の代わりにリシアに自分のクランの一員になってもらうよう呼び掛けた。
ようやくパーティーが二人に増えたレオンとリシアは、さっそく古城の攻略に向かうのだが…。

登場人物

レオン

もともとは孤児で、古城持ちにしてクランのリーダーである女性に拾われ育てられた。
育ての義姉が逆ハーレムを形成していたことから、自身もハーレムクランを形成することを夢見る。
右手の甲に痣があり、何か秘密があるようだが…。

リシア

自称天才魔導士の少女。
人並外れた魔力を持つがノーコンのため役立たず。
横暴な態度だが意外とメンタルが弱く、レオンの何気ない言葉にいちいち傷ついてしまう。

ここがイチオシ

期待を裏切らない王道中の王道物語

正義感の強い少年がヒロインのピンチに駆け付けるっていう王道中の王道作品です。
初めから終わりまで全てが予想通りの展開で進むため、これを面白いと思うか退屈と取るかは人それぞれでしょうが、およそ読者の期待を裏切ることはないと思います。

ここがちょっと気になる

古城の設定が破綻している

この作品の欠点はこれに尽きます。

冒険者は古城の主、あるいはそのクランメンバーになってようやく一流という風潮があるようなのですが、古城を手にするのは冒険者だけではなく、実は商会クランなんかも古城を持っているようなんです。
そう考えると商会以外にも色々な職業の人たちが古城を持っていると考えるのが妥当なわけでして。
で、作品の情報から考えると大雑把に10人につき一つの古城を持っている計算になります。

え、古城の数ヤバくね?

この世界の人口がどれくらいかはわからないですが、まぁどう考えても見渡す限り城が建っていないとおかしいですよね。
読者に公表するかどうかは別としてファンタジー系の物語って世界地図が必須だと思うんですけど、この作者は地図を作らなかったのでしょうか。

メインキャラに魅力がない

一番魅力があるのが敵役で出てきたヴェルナーだけってどういうこと!?

何はともあれ主人公にもメインヒロインにも魅力がありません。

主人公は自己評価低い上に「俺何かやっちゃいました?」系でげんなり。ハーレムを目指すという割に女の子に対する執着があまりに薄く、おまけに鈍感と手に負えない。

一方のメインヒロインは頭悪くてキレやすくて自信過剰。それを補う何かがあるかと思えば何もないという。
ところでノーコンならばファイアボールなんて撃たずに広範囲に炎をまき散らすとか他の選択肢はなかったのかね。
キャラデザは非常に好みなのだけれど、まるパクりしたんじゃないかと言わんばかりにそっくりなキャラがスニーカー文庫から出ているなろう原作のラノベに出てきてしまっているのがなんとも…。

おまけに主人公、ヒロイン共に節々でなんか性格の悪さが滲み出てくるのでどうも好きになれません。
主人公は必ず正義であれとは言いませんが、この作品においては主人公ってヒーロー役なわけでして。

一方の悪役として出てきたかと思ったヴェルナーは横暴ではあるもののどこまでも芯の通った生き方をしているし、ちゃんと相手の生き方も尊重しているという実は一番魅力的なキャラというのはどういうことだろう。

終わりに

オリジナリティのある部分は設定が破綻し、まともな部分はテンプレをなぞったようなありきたりで予想も容易なストーリー。
あまりファンタジー作品を読んだことが無い人にとってはそこそこ楽しめるかもしれませんが、ある程度馴染みのある人にとってはかなり物足りない感じがしてしまうでしょう。

文章が破綻しているとかそういうことはないので、別の作品なら楽しめる可能性は十分あるかと思いますが、そうなると編集がどれだけ介入するかという話になってしまいますね。