【感想】聖剣学院の魔剣使い は流行りを上手く組み合わせた優秀な作品

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かんたん評価

オススメ度:★★★★☆
かつて魔王の一人だった主人公は、人間の勢力に負けそうなのを悟り、ある女神との約束のために1000年後へと転生する。
目覚めた彼を待っていたのは、遥かに発展した代わりになぜか誰にも使われることが無くなった魔術と、謎の侵略生物ヴォイド、そしてそのヴォイドを倒すべく人類に授けられたと言われる“聖剣”という力だった。

前作『精霊使いの剣舞』もそうでしたが、一つ一つの要素を見るとどれもどこかで見たような設定ではあります。しかし、それらが非常に上手く組み合わされており、しっかりとオリジナルな作品になっているのがこの作者の凄いところですね。
新鮮さはありませんが、あらすじの要素が嫌いでなければ読んで損はない作品だと思います。

以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。

こんな作品

あらすじ

当時魔王の中でも最強であったレオニスは、しかし神々に祝福された上になりふり構わない人間たちの勢力<六英雄>に圧されていた。
かつて人間だった彼を救い、魔王へと引き立てた反逆の女神との約束のためにここで負けるわけにはいかず、レオニスは自らを封印して1000年後に転生を果たすことになる。
およそ1000年後、謎の生命体“ヴォイド”を倒すべく立ち上げられた聖剣学院に通う少女・リーセリアは、偶然にも遺跡に眠っていたレオニスの封印を解いてしまう。
ところが、目覚めた彼を待っていたのは魔王の体ではなくまだ人間だった頃の肉体、しかも10歳という少年の姿だった。
そんな二人の元に突如現れるヴォイド。
レオニスのことをヴォイドに連れ去られた棄民と思い込んだリーセリアは、彼を守るべくヴォイドと戦おうとするが…。

登場人物

レオニス

かつて人間だったが、同じ人間に裏切られたことで死亡。反逆の女神に救われたことで不死の魔王となった。
転生に失敗したことで人間だった時(しかも10歳)の肉体になってしまい能力が大幅減。
魔術が得意で、レオニスが開発した魔術もかなりある。

リーセリア

聖剣学院に通っているものの、聖剣が現れない落ちこぼれ。
両親も聖剣使いだったが、ヴォイドに襲撃された際に敗れて死亡。
紆余曲折あってレオニスの保護者のような配下になる。

レギーナ

聖剣学院に通っている女生徒で、リーセリアの従者でもある。
砲撃型の聖剣を扱う学院の中でもかなりの実力者。
エロい。

聖剣とは

聖剣と言いつつ剣の形をしているとは限らず、いわゆる不思議な力で具現化するなんでもありの武器。
ヴォイドと戦うために神々が人類に与えた力と言われていて、エルフや獣人など他の種族には発現しない。真実は誰も知らない。

ここがイチオシ

テンプレでありながらオリジナルな作品

聖剣に魔剣が登場、魔王が主人公で子供に転生する学園ものと、悪く言えば既視感の強い作品です。
テンプレ要素がずらーっと並んでいますが、ではこの作品と一致する内容のものが他にあるでしょうか。
強いて挙げるとすれば魔王学院の不適合者がやや近いですが、内容を読めばコンセプトが全く違うことがわかります。
そう、テンプレをふんだんに活用しつつも、『聖剣学院の魔剣使い』は間違いなくオリジナルな作品なのです。

テンプレと言うとあまり良いイメージが無いですが、実際には共通認識で説明を省けるのは物語への理解度が深まりますしテンポも良くなります。
実際に本作は世界観の説明文抑えていて、それでいて概ね理解できてしまいうという読みやすさが売りと言っていいのではないでしょうか。

期待を裏切らないストーリー

本作は「世界征服を目論む魔王だけれど、なんだかんだピンチの女の子を助けて敵をやっつける」というまぁ非常にオーソドックスで何の捻りもないストーリーなわけですが、丁寧な下地のもとに作られた王道ストーリーは本当に面白い。

オーソドックスなストーリーと言っても、どうしてその展開になったのか、その時のキャラクターの心情はどんなものだったのか、どうやってヒーローを活躍させるかは作者の手腕が大きく影響してくるところです。
敵がただのおバカなだけだったらつまらないし、ヒーローがナチュラルに犯罪行為をしていたらドン引きです。

それを余計なノイズを入れることなく、それでいて読者の期待しているものを届けてくれるのが『聖剣学院の魔剣使い』という作品です。

ここがちょっと気になる

オリジナリティは薄い

あらすじを見れば予想できるかと思いますが、本作は何かのパクリではなく間違いなくオリジナルの作品ではありますが、一方で今まで見たこと無いようなオリジナリティという要素は限りなく薄いです。

ブームの走りという立ち位置ではなくブームに乗った作品であるため、「気になるなら読んで損はないよ」とオススメすることはできるのですが、「これは絶対読んでおいた方がいいよ!」と積極的に推せるほどのものは持っていないという惜しさも併せ持っています。

終わりに

設定や用語に目新しさはありませんが、「こういう設定が好み」という人であれば読んで間違いなし!という信頼感のある作品です。
好みの差は出てしまうでしょうが、期待を裏切ることはないでしょう。