【感想】今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。 は願いを叶える流れ星をめぐる物語

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かんたん評価

オススメ度:★★★★☆
二番目に大事なものと引き換えに願いを叶えてくれる都市伝説を題材としたラブコメ。
小気味よいテンポで繰り広げられる幼馴染の妹・灯火と繰り広げるウザ可愛い会話に癒される一方で、少しずつ明らかになっていく灯火の秘密に胸が切なくなります。
なぜか公式のあらすじには書かれていませんが、ココロコネクトや青ブタのような不思議要素があるので注意!
それさえ気にしなければ非常に完成度の高い作品でオススメです。

以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。

こんな作品

あらすじ

この街には《星の涙》という都市伝説がある。
七河公園に降り注いだ七つの流れ星。それは星が流した涙。星の涙には無くしてしまった“一番大事なもの”を取り戻してくれる。ただし、二番目に大切な何かを失う代わりに…。

かつて星の涙に願い事を託し、そして大事なものを失った伊織は、同じように星の涙に願いを託そうとする者を止めるべく今日も夜の七河公園へと足を運ぶ。
そこで出会ったのは、かつて仲の良かった、そして今は交流の無くなってしまった幼馴染・双原流希の妹・灯火だった。
彼女との出会いが星の涙とは関係のない偶然であればいいのに。そんな想いも虚しく、次の日の早朝に灯火は伊織の家を訪れた。


「おはようございます、伊織くんせんぱい。かわいい後輩がお迎えに上がりましたよ!」


登場人物

冬月 伊織

本作の主人公で流宮高校の二年生。
感情が無く、心ない言葉ばかり口から出てくることから“流宮の氷点下男”と呼ばれているが、実際にはとある事件をきっかけに感情を表に出すこと、人と関わることを辞めただけ。

双原 琉希

小学生の頃に親友だった女の子。
ある時から会う機会が減り、交流が無くなってしまった。

双原 灯火

琉希の妹で、伊織と同じ高校の一年生。
昔は姉の後ろでこそこそしているような引っ込み思案な女の子だったが、久々に再開したところグイグイ来る小悪魔系の女の子になっていた。
星の涙に何かを願おうとしていたようだが…。

与那城 玲夏

中学、高校と伊織のクラスメイトの女の子。
伊織のことが大嫌いでいつも冷たく当たってくるが、そこには何か理由がある模様。

遠野 駆

小学校からの知り合いで高校でもクラスメイトだが友人未満。
現在ほぼ唯一の伊織に絡んでくる男。
軽薄で色んな女の子にちょっかいを出している。

ここが魅力

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好奇心を掻き立てるストーリー

序盤からバンバン飛び出てくる謎の数々。


・主人公が星の涙に託した願いとは?
・灯火が抱えている秘密とは?
・なぜ灯火は主人公にグイグイ来ているのか?
・なぜ主人公は与那城にこんなにも嫌われているのか?


序盤に多くの謎が出てしまうと置いてけぼりにされた感が出てしまうものですが、この作品の序盤は灯火との何気ない会話がメインのため全く気になりません。
そんな中物語が進むにつれて少しずつ判明していく感じがなんとも絶妙です。
しかも、これらの謎はほったらかしにすることなく、しっかりと1巻で判明するところもまた素晴らしい!

唯一、星の涙について知っているらしい怪しい露店商についてだけは今巻ではわかりませんが、物語の根幹に関わりそうなので1巻ではわからないのは読んでいると予想できます。

灯火ちゃんとの会話がとにかく楽しい!

おー、なんですかなんですか、伊織くんせんぱい? ははーん、さてはわたしとペアで登校するのが恥ずかしいわけですね? 意外と初心で照れ屋さん……ギャップですね!

本当はちょっと人見知りしちゃう女の子にも関わらず、どうしたわけか突然小悪魔系後輩キャラを演じる灯火ちゃん。
そんな灯火ちゃんの絡みをウザそうに対応する伊織は小悪魔ズラを剥がすべく誘導していくと、あっさり素が出てしまう灯火ちゃん。

「お、おかしいな。お姉ちゃんはモテたんだけどな……いったいわたしには何が足りないというのか」
「いろいろとそれ以前の問題だよ。まずなんだ、小悪魔系後輩って」
「う、うそ。そんなはずは……わたしはちゃんと、学校のせんぱいにアタックする方法をネットで調べて行っているというのにっ!!」

こうした何気ない会話がテンポよく繰り広げられていて非常に微笑ましいです。

終盤少々シリアスな展開が入ってくるためそこは自重しますが、基本的にはこの調子で進むためハマればめちゃくちゃ楽しめること間違いなし!

ここがちょっと気になる

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あらすじが説明不足

この記事の冒頭でも言いましたが、公式から出ているあらすじ情報には《星の涙》の都市伝説に関する記述が一切なく、ウザ可愛い後輩とひたすらイチャイチャするラブコメかのように宣伝しています。
ところが、いざ読んでみると中々に重い内容も含む非常に奥深い物語となっていることがわかります。

一般的にはタイトル詐欺、あらすじ詐欺というのは騙されたという負の感情が出てしまうため、余程のことがない限りデメリットの方が大きいかと思います。
そしてこの作品においては《星の涙》という不思議要素を隠しすことに何もギミック等は用意されておらず、余程のことはないというのも読んでいるとわかります。

この作品に良さを感じたからこそ、わざわざ隠したりせずに素直に宣伝すればよかったのにと思わずにいられません。

終わりに

ウザ可愛い系後輩女子とのイチャイチャを楽しみつつ、この物語の舞台に生まれた《星の涙》の秘密を紐解いていく物語です。たぶん。
星の涙は7つあるわけで、一つは伊織が使い、もう一つは灯火がもっていて…。
ということは最低でもあと5つは物語があるということかな?