【感想】八男って、それはないでしょう!はいかにもななろうテンプレ作品
かんたん評価
オススメ度:★★☆☆☆
突如異世界に転生してしまった主人公・ヴェンデリンは、なんと貧乏貴族の八男というお先真っ暗な始まりを迎えてしまう。
というところから始まる物語ですが、速攻で膨大な魔力と豊富な魔法を手に入れてお金や地位もなんとかしてしまう、いわゆる「なろう」っぽさが満点の作品です。
1巻までなら未開の地で工夫して生活している感があって比較的楽しめるかもしれません。
アニメでやるであろう4巻までは人によっては読めるかもしれません。
それ以降は度を超えたハーレムだったりジャンルを問わない知識無双だったりでかなり人を選びます。
以下、極力ネタバレがかなりあるためご注意ください。
こんな作品
あらすじ
平凡なサラリーマンだった男は、ある日気付けば貧乏貴族の八男ヴェンデリンとなってしまっていた。
八男では領地も継げず家族の支援も期待できない。幸いなことにとんでもない魔法の才能を持ち、運よく優秀な師匠に出会い子供とは思えない力を得たヴェンデリンは、実家を出て冒険者を目指すことに。
“なろうの異世界転生と言えばこんな感じ”というもののテンプレ的作品です。
主人公は強力な魔法の使い手
国も手こずる竜をあっさりと倒してしまう
あっという間に貴族へと昇格
一生かかっても使いきれないほどの資産を手に入れ
ハーレムをつくる
およそ男性の英雄願望を詰め込んだような内容で、これがほぼほぼ1巻に詰め込まれています。
ここが魅力
史上まれにみるハーレム要員の多さ
面白いというよりはすごいという内容になりますが、最終的に33人もの女性を嫁にするというフィクションとは言えかなり無茶なことをやってのけてくれます。
「えぇ!? その人もハーレムに加えちゃうの!?」と思わず口に出してしまいかねない人までもハーレム要員に加えられます。
ぶっちゃけ登場する女性はほぼハーレム要員になると思って間違いないです。
ヒロインは一人で十分な僕としてはさっぱりわからないのですが、世の中には登場する女性キャラクターはことごとく主人公のものになるべき教という宗派の方が一定数いるようです。
これは他の作品の感想欄にもいたので間違いないでしょう。
そういう宗派の人にとっては、この『八男ってそりゃないでしょう』という作品は大変魅力的に見えるかもしれません。
ここがちょっと気になる
物語の着地点が見えない
本作冒頭での主人公の目標、それは「それなりに稼いで老後を楽に生きる」というものでした。
ところがこの目標はわずか1巻、12歳にて達成してしまいます。
八男という問題はどこへ行ったんだ!?
…そこからの物語は主人公にも作品的にも目的や目標といったものはなく、王様に頼まれたりふって湧いてきた問題をひたすら解決したりしていくだけ。
その調子で落としどころが見えないまま物語という名の“おつかい”が進んでいったと思ったらあるところで唐突に最終話が訪れます。
このあまりの唐突さには伝説のギャグマンガ『すごいよ!マサルさん』を思い出しました。
日常系やコメディ作品であれば明確な終わりを作りづらいというのはわかりますが、こうしたファンタジー作品であれば何かしら終わりを作れそうな気がします。
ん? もしやこれは日常系作品だった…?
作者の男尊女卑な観念がキツイ
“作品の世界観的に男尊女卑な面がある”ということであればとやかく言うことではありません。中世っぽい文明ですし、そもそも異世界なんだからそうだと言われてしまえば最早何も言えないでしょう。それ故の問題とか発生したら、それはそれで物語として面白いですしね。
ところがこの作品、そうした背景が“女の子側から乞わせてハーレムを築き上げる”という欲望を満たす要素としてしか使われません。「この人と結婚すれば将来は安泰だわ」という感じで。
主人公側もこの“男尊女卑な世界だから~”というのを言い訳にどんどん受け入れていき、しまいには兄弟にまで一夫多妻を薦めだす始末。
ところで、ぽんぽんヒロインというか嫁が増えていくわけですが、物語に深く関わってくる女性はほとんどいません。
嫁(あるいは嫁候補)になった後はたまに会話に参加してくる程度で、居ても居なくても変わらない存在になってしまいます。
この作品において女性はトロフィーか何かなんだろうなという感じがにじみ出ていてなんとも気持ち悪い。
終わりに
なろうのテンプレ的作品とは言われていますが、ここまで嫁を増やす作品も、国家予算レベルで富を増やす作品も正直他に見たことがないため個性的と言えば個性的でしょう。
逆にこうした点がちょっと行き過ぎていると感じる人もいるでしょう。
テンプレ的作品は他にもごまんとあるのですから。