【感想】魔女の旅々 は絵が可愛い以外は虚無感だけが残った

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かんたん評価

オススメ度:★★☆☆☆
小さい頃から読んでいた冒険譚に憧れていたイレイナは、異例の若さで魔女の資格を取り、行く当てのない旅に出かける。
行く先々で何かしらのイベントが起こるっちゃ起こるのだけれど、特に感動的な話があるわけでもなく笑い話でもない。イレイナが解決するわけでもない話も多く、読み終えた後は虚無感だけが残る本。

以下、ややネタバレ多め。特に1巻の1話に関しては完全にネタバレをするため、これから楽しみにしている人はご注意ください。

こんな作品

あらすじ

家にあった冒険譚がお気に入りだった少女・イレイナは、世界中を旅することに憧れていた。
「魔女になったら旅に出てもいい」と母親に言われたイレイナは努力の末に異例の若さで魔女の資格を得る。
旅人となったイレイナは、行く当てもなく色々な国を渡り、様々な出会いを経験していく。


ここが魅力

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表紙のイラストは可愛い

表紙のイラスト、可愛いですよね。
もうこの作品の魅力は表紙に集約されていると言っても過言ではないでしょう。

一方で作中のイレイナは割と毒を吐いていたりめんどくさそうな雰囲気を醸し出したりしている印象が強いので、表紙のような女の子を想像してはいけませんが。

ここがちょっと気になる

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オチの無い話が多い

この作品の内容は色んな国に行って一期一会の出会いをするってのがメインだと思うんですが(それにしては再会することも多いけど)、本当になんとなく出会ってちょっとだけ関わるだけという、特にオチも感動も無く終わってしまう話が多いです。
イレイナが解決するわけでもなく、逆にイレイナの人生観に影響を与えるでもなく、なぁなぁで終わります。(そうでない話もあることはあるけれど…)

例えば1巻の1話は魔女見習いを目指す少女と出会い、成り行きでその少女の指導をするという話になります。ところが、実はその少女は結構実力のある魔法使いで、足りなかったのは一人で戦う勇気だった。その勇気をイレイナから貰った…的な話になるのですが、結局その少女が試験に合格するのはイレイナと別れてから何度も何度も挑戦してやっとという結末。
果たして少女に足りなかったのは本当に勇気だったのか? そもそもイレイナは少女に勇気を与えられたのか…? というなんともモヤっとしたものが残ります。


ところでこの1話はこの作品の中でもかなりまともな話の方で、中には『突如筋肉男がやってきてわけのわからないことを言いながらグダグダになって終わる』とか、『イレイナにはどうしようもないので放置して次の国へ旅立つ』とか、本当にオチも何もない話が当たり前のようにあります。

正直この作者が何を書きたいのかが始終わかりませんでした。

魔女の在り方が歪

魔女の旅々という作品内において魔法は割となんでもアリなレベルで非常に強力な力で、作品によっては奥義とされてもおかしくない『時間逆転』という魔法を魔女なら誰でも使えてしまいます。
これが使えるだけでも魔女の有用性は計り知れませんが、イレイナが自由に旅をしていることからわかるように国から特に制限されずかなり自由にされています。

それだけなら「平和な世界なんだな」と無理矢理納得できないこともないですが、どういうわけか魔女見習いの試験の内容は箒による浮遊と攻撃魔法です。

箒による浮遊と攻撃魔法です!

百歩譲って箒で飛べることが必要なのはわかりますが、世界観的にも争いに繰り出される感じはなさそうなのになぜ攻撃魔法?
どう考えても時間逆転の魔法をどれだけ使えるか試験した方が有意義だと思うのですが。
作風的にも攻撃魔法が使われることはほぼ無く(というかそもそも魔法使う場面がほぼ無いのだけれど)、読み進めるほどに試験に攻撃魔法が必要な理由がわからなくなっていきます。

一方で魔女が当たり前のように攻撃魔法を使えるのだとしたら、国でガッチガチに縛られていないと危なっかしいったらありゃしません。
言ってしまえば銃火器持ち歩きながら国々を旅しているようなものなのに、魔女が自由にのびのびと暮らしているこの世界は一体どうなってるんでしょうね。

終わりに

旅に目的がなく、物語にオチも教訓も笑いも無し。
異例の若さで魔女になったという優秀さも作中で活きる場面はなく。
魔女のお話であるはずなのに魔法を使う場面は訪れず、魔女らしさは箒に乗っているのみ。

設定の悉くが特に意味を成さず、読み終わった後の虚無感が半端有りません。
イレイナの言動が少々ウザったいくらいで特別不快な場面はなかったように思いますが、その代わり何も残してくれるものがありませんでした。