【感想】独特な文章がクセになる! 西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~
かんたん評価
オススメ度:★★★★☆
異能力を駆使してどんな依頼も完璧にこなす、裏社会で知らぬ者は居ない西野五郷。
しかし、冴えない顔とその口下手さから彼はカースト底辺の高校生活を送っていた。
ある日、「思い出に残る青春を送りたい」と思った童貞は、彼女を作るべく奮闘するが…。
・想像の斜め上を行く展開
・どこまでもポジティブな主人公
・下品な表現が多め
・上下巻編成
西野ってこんな作品
あらすじ
学園カーストの中間層、冴えない顔の高校生・西野五郷は、界隈随一の異能力者だ。ダンディズムを愛する彼の毎日は、異能力を使ったお仕事一筋。常日頃から孤独な生き様を良しとしてきた。シニカルなオレ格好いいと信じてきた。だが、その日々も永遠ではない。高校二年の秋、童貞は文化祭を通じて青春の尊さに気付く。異性交遊の大切さを知る。これはそんな西野少年が、過去の淡白な人生から心機一転、日々の生活態度を改めると共に、素敵な彼女を作って高校生活を謳歌する為、あの手この手を用いて学園カーストを駆け上がらんと奮闘するも、一向に登れそうにない、なんちゃってハードボイルド物語(異能バトル付き)
ざっくり言うと、裏社会では超有能だけれど学校では底辺のフツメン主人公が、人並みの青春を味わおうと奮闘するも空回ってクラス内の人間関係をぐちゃぐちゃにしていくお話です。
この手の作品では、実はすごい主人公に今まで素っ気なかったクラスメイトが惚れてしまう的な展開がテンプレだとは思います。しかしそこは田中でも定評のあるぶんころり先生、主人公にそんな甘い展開は訪れません。
やることなすこと裏目に出てしまいクラスメイトの不興を買ってしまう主人公。
それに加えて仕事で関わった超有名芸能人や金髪美女が寄ってくるせいで嫉妬の対象にまでなってしまう。
話が進むにつれクラス内での居場所が無くなっていく主人公に青春の思い出は作れるのか!?
キャラクター紹介
・西野
異能力を駆使する最強系主人公。ただしフツメン、童貞。
友達はペットのハムスターのみ。
ハードボイルドに憧れており、シニカルな態度が癖になっている。そのせいで余計にクラスメイトから嫌われている。
・ローズ
イタリア系金髪美少女ロリで本作のメインヒロイン。
その実態は西野にコネを持つべく裏社会から派遣されたエージェント。
再生の異能持ちで簡単には死なないし人間離れした身体能力を誇る。
・竹内
イケメンでサッカー部のエースで勉強も出来て医者の息子と完璧リア充。
その実態は女の子を食いものにするクソ野郎だが、西野に関わってしまうことで悲惨な運命を辿ることに…。
・志水
通称・委員長。むしろ委員長としか呼ばれない。
クラスでも指折りの美少女で竹内くんを狙っている。
西野を格下と見下していたが、彼が様々な言語をペラペラに話せる様を見て自信を無くす。
西野に関わることで悲惨な目に会う人が多い中、比較的マシな部類。(悲惨な目に会わないとは言っていない)
・マーキス
スキンヘッドの厳つい黒人。
表向きはバーテンダーだが、西野の仕事の仲介など裏社会の住人。
見た目のわりに良いやつで、西野が信頼している数少ない人。
・フランシスカ
イタリア系美女で、ローズの上司。
その美貌で男をたらし込み、若くして上に伸し上がってきたやり手。
まだ20代なのに作品内での扱いが股臭オバサン…。
西野のここが面白い!
常に想像の斜め上をいく超展開
クラス底辺のフツメンが主人公という時点で既にセオリーから外れていますが、そこから繰り広げられる物語も想像の斜め上を行く展開で、先が全く予想できません!
クラスでイジメにあっても意に介さないどころか、他のクラスメイトにも被害を広げる厄介な主人公
なぜか主人公に憧れてしまう超イケメンツンデレロックミュージシャン
彼女が欲しくてたまらないはずの主人公に見向きもされないヒロイン
ネタバレになってしまうのであまり詳しく書けませんがこんなのはごく一部で、他にも様々なとんでも展開が繰り広げられていきます!
どこまでもポジティブな主人公
基本的にクラスメイトから虐げられる展開の多い本作の主人公。
陰湿なイジメやすげない女子の態度に、普通なら心が折れてしまいそうなことがバンバン起きるのですが、このフツメンはとにかくめげない!
あまりにもポジティブ過ぎる姿は、普通なら読者に嫌な印象を与えかねないイジメですらギャグに変えてしまいます。
異能力を持ってるとか関係ない…。この主人公、メンタルが強すぎる!
独特な文体が癖になる
本作の語り手は第三者視点で書かれているのですが、その文体が非常に個性的となっています。
西野のことをフツメンや童貞、ローズであれば金髪、志水は委員長などなど、キャラクターを名前ではなく属性で呼ぶことが多かったり、う〇こ漏らすことを尻から尊厳がにじみ出ると表現したりと、非常に独特で、地の文の時点で笑わせてくれます。
良くも悪くもアクが強いので、好き嫌いは別れちゃうかも?
てか主人公の呼び方辛辣過ぎ!
西野のここがちょっと気になる
下品な言葉が多い
筆者の別作品である田中に比べれば遥かにマシですが、この西野も結構下品な言葉が多めです。
学園モノでありながら頻繁に登場する『セックス』の文字はまだいいほうで、ハメ撮りだとか股臭オバサンだとか、ちょっとこれをMF文庫で出していいのか? と思わなくもありません。
この手のものは平気な人は何ともない一方で、苦手な人はとことん苦手でしょうから避けた方が無難です。
初っ端から上下2巻構成
原作がweb小説だから、というのもあるのでしょうが、物語が基本的に上下巻構成になっており、奇数巻だと非常にキリの悪いところで終わってしまいます。
まぁ展開が2巻以上に渡ってしまうことは別に珍しくないのでとやかく言うことではないと思いますが、それが1巻からとなってしまうとちょっとモヤっとした気持ちに。
1巻は特に盛り上がりに欠けるため、ここで読むのを辞めてしまう人が続出してしまうとちょっと悲しいです。
これから読もうという人は必ず2巻まで購入してください!
終わりに
独特な雰囲気と独特な展開が売りの本作。
普通のラブコメや普通の異能バトルものに飽きた人は手に取ってみてはいかがでしょうか。
きっと新しい世界が広がると思います。