【感想】私、能力は平均値でって言ったよね!は30代オタクを狙ったギャグ作品
かんたん評価
オススメ度:★★★☆☆
優秀であったがために孤独な人生を歩んでいた女子高生の海里。
事故死により異世界に転生する機会を得た彼女が望んだのは、平凡な人生だった。
しかし何を勘違いしたのか、神様が海里に与えたのは人類の平均値ではなく、最強種を含めた能力の平均値だった。
とんでもない力を手に入れてしまった海里はそれでも平凡な生活をしようと試みるが、やることなすこと非常識のオンパレードで、国に居られなくなり旅に出ることにする。
・ボケとツッコミから成る冒険譚
・前世の設定はどこ行った?
・マンネリで飽きるかも
この作品を一言でいうならば、「可愛い女の子たちがボケとツッコミをくりかえしながら水戸黄門的に事件を解決していく」という作品です。
以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。
こんな作品
あらすじ
私、アスカム子爵家長女、アデル・フォン・アスカムは、10歳になったある日、強烈な頭痛と共に全てを思い出した。
自分が以前、栗原海里(くりはらみさと)という名の18歳の日本人であったこと、幼い少女を助けようとして命を落としたこと、そして、神様に出会ったことを……出来が良過ぎたために周りの期待が大きく、思うように生きることができなかった海里は、望みを尋ねる神様にこうお願いしたのであった。
『次の人生、能力は平均値でお願いします!』なのに、何だか話が違うよ!
3つの名前を持つ少女、剣と魔法の世界で、うっかりS級ハンターなんかにならないように気を付けて普通に生きて行きます!
だって、私はごく普通の、平凡な女の子なんだから!
タイトルから予想が付くと思いますが、簡単に言うと
“平均値にしてもらうよう神様に頼んだはずなのに、とんでもない能力になっちゃった!”
という始まりです。
転生前の人生では優秀だった変わりに人間関係がうまくいかなかったことから、新たな人生では平均的な能力で始めたいと願う主人公。
それに対して神様が行ったのは、親切なのかうっかりなのか、世界最強の存在(最強の古竜種)と世界最弱の存在(プランクトンとか?)との真ん中の力を与えてしまいまいました。
その力は一般的人間のなんと6800倍!
力を隠して生きていこうとするも、当然そう上手くいくわけがなく…。
行く先々でハチャメチャなことをしながら女の子4人で旅をするお話です。
ここが面白い
女の子4人が織り成すコメディ冒険譚
この作品の魅力は何と言っても主人公含む女の子4人が繰り広げる、ボケとツッコミの嵐でしょう。
ひたすらボケたおす主人公、それにツッコミを入れるパーティーメンバー。
かと思えば突如他のメンバーがボケたりなんかも。
イメージとしては『らき☆すた』とか『けいおん!』、『ゆるゆり』のような日常系アニメに、小説家になろうにありがちな異世界冒険ファンタジーを加えたような作品です。
ただし、よくある日常系と違って男キャラはバンバン出てきます(恋愛要素は無いのでご安心を)
ちなみにパロディネタがかなり多めです。
幅広く取り扱われているものの1990年代の作品の割合が多いため、人によってはさっぱりわからないという可能性も…。
たぶん30代のオタクを狙い撃ちにしています。
ここがちょっと気になる
前世の設定はどこへ行ったのか?
本作の主人公は前世では周りから特別扱いされるほど優秀で、それゆえ友達がいない、家に帰って勉強をするかゲームをするかしかないような少女でした。
それがどういうわけか、転生後はオヤジギャグを連発するハイテンションキャラへと様変わり。
ちょっと考えれば先が想像できるようなミスを連発して“普通じゃない”ことが周りに発覚し、街を出ていかざるを得ない状態へと陥ってしまいます。
いやいやお前、前世はそういうキャラじゃなかったやん!?
まぁ実際のところ前世の主人公の性格は情報が少ないので明確ではないのですが、絶対にこんな性格ではないと思う。
というか、この主人公、海里という少女からアデルという少女に生まれ変わるのですが、理由あって途中でマイルという名前に変えてしまいます。
3つの名前を持つことになる少女とかどこかに書かれていましたが、ぶっちゃけ特に意味はないというか…。
主人公は基本的に超絶能力で敵をやっつけて超絶能力で旅を楽にしてオヤジギャグを言うマシーンと化すため、あまり深く考えても仕方なかったりします。
マンネリで飽きる
ハマってるうちは非常に面白いんです。
僕自身、そこそこ長い期間楽しんでいましたし。
ただ、日常系の宿命と言いますか、物語が無いんですよね…。
物語冒頭は学園に通ったりハンター養成学校に通ったりと目的や期間が定まっています。
ところが、仲間を作って旅に出るようになると目標らしい目標が完全になくなります。
それでも旅に出てしばらくは楽しめるんですよ。
海里というかアデルというかマイルの無茶苦茶な能力やオヤジギャグに笑わせてもらえます。
ところが西へ旅に出ては適当な街で適当な依頼を受け、東へ旅に出ては適当な街で適当な依頼を受け…というのが延々と繰り返されていると流石に飽きてきます。
展開は基本的に変わり映えしません。
一つ一つの依頼が比較的短めで特にドラマとかもないので、「次巻が楽しみで仕方ない!」という気持ちも湧いてきません。
一般的なストーリーのあるラノベと違って、無理に読み続けてもどこかで好転することはありません。
適当に楽しめる巻まで読んで、飽きてきたらサクッと離脱してしまうのが吉です。少なくとも2巻くらいまでは問題なく楽しめるでしょう。
終わりに
女の子たちによるコメディが見たい! という人は一度挑戦してみてもいいのではないでしょうか。
この手のものにしては珍しく男キャラが登場しますが、特に恋愛要素は無いのでそういうの気にする人にも安心して読めるでしょう。
ちなみにコミック版の『私、能力は平均値でって言ったよね!』は小説半分近くをダイジェストですっ飛ばすという暴挙に出ており、話がさっぱりわからなくなるのでいるのでオススメできません。