【感想】数字で救う! 弱小国家 が面白いし勉強にもなって最高!
かんたん評価
オススメ度:★★★★☆
とある事故で異世界へ転移してしまうことになった数学者の卵・ナオキ。
そこで出会った少女はまさかの弱小国家の王女様だった。
魔法もモンスターもない中世ヨーロッパのような異世界。剣も銃も扱えないナオキは、唯一得意な数学の力で戦乱の世を生き抜いていく!
・魔法も異能もモンスターも居ない戦記もの
・数学を活用して不利な状況でも勝ち進む
・でも数学では解決できない問題もある
・数学が苦手でも十分楽しめる
・ハーレム要素あり
なろうっぽい安易な展開を想像していたら予想以上に山あり谷ありのストーリーで非常に楽しめました。
登場する数式自体はそこまで難しいものではなく、理解できなければ飛ばしても問題ないのはライトノベルらしくて良いと思います。
以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。
こんな作品
あらすじ
小国ファヴェールの王女・ソアラは悩んでいた。隣国との緊張が高まり、戦争の気配がちらつき始めた今、国力が低い自国を守るにはどうすればよいか。父王は病に倒れ、頼みの綱の家臣たちも、前時代的な「戦いの栄誉」ばかりを重視し、国を守る具体案を誰も持たないまま。このままファヴェールは滅ぶのか…。しかし、そんな時、彼女の前にある人物が現れた。“ナオキ”―後の歴史に“魔術師”の異名を残したその青年が扱う『数字』の理論と思考は、ソアラが求めた「国を救うための力」だった…!異能ナシ、戦闘力ナシ、頼れるのは2人の頭脳だけ…!理系青年と、敏腕王女が『戦争』という強敵に挑む『異世界数学戦記』、ここに登場!
異世界転移ものではあるものの、魔法も無ければモンスターも居ない中世っぽい世界観ということで、雰囲気はどちらかというとタイムスリップものに近いのではないでしょうか。
国とか地名とかはオリジナルなのでそこはやはり異世界ですが。
ここが面白い
数学が何の役に立つかよくわかる
「数学を勉強して何の役に立つの?」
なんて言葉は昔からよくネタにされています。
実際のところ日常生活では小学生レベルの算数さえできれば十分なことがほとんどで、数学ができなくても死ぬことはないでしょう。
生活に必須ではないものに興味を持つのは難しいですよね。
例えば、地平線までの距離は地球の半径と自分の身長からおおよその値が導き出せるんだよと言われても「ふーん(どうでもいい)」という人がほとんどではないでしょうか。
では、ソシャゲのガチャで目当てのキャラを引き当てるのには何回ガチャを回せばいいかと言われればどうでしょう。
少なくとも地平線までの距離よりは興味を持つ人は増えるのではないでしょうか。
本作はこのように、ライトノベルを読む層が興味を持ちそうな内容や、戦記ものという観点から直面する問題に対して自然に数学の活用例を取り入れています。
しかも、ありがたいことに解説付きで載っているため、非常に理解しやすいです!
数学を活用すれば見目麗しいお姫様と仲良くなれるんだから学ばない手はないだろう?
ちなみに、ソシャゲで5%のお目当てのキャラを引き当てるために20連した場合、当たる確率の答えは作中にて説明されていますのでぜひ読んでみてください。
先の読めないストーリー
この作品の魅力はなんといっても先の読めないハラハラするストーリーです。
作品のコンセプトを見ると「計算で何でも解決しちゃうんじゃないの?」と思うかもしれません。確かに大抵の問題は計算で何とかしようとしており、実際に経済なんかは数学の力で大きな変革をするわけですが、まぁこれは現実世界でも同じですよね。
ところが戦争となると勝手が違ってきます。
もちろん戦争という場面でもナオキは数字の力を大いに役立てるわけですが、軍隊の動きは見えても個人の心までは完全に計算することはできません。
時には裏切り者が出てくることもありますし、逆に敵ではなかったなんてことも。
この辺りは主人公、ヒロイン共にコミュ障気味という設定がよく活かされている面と言えるのではないでしょうか。
数字で圧倒的有利になることもあれば、数字の力だけではどうにもならないこともある。
そのバランス感が絶妙で、だからこそ本当の数学の有効性を認識できます。
ここがちょっと気になる
ヒロイン一人じゃないんかい!
本当は好きな作品のネタバレは極力避けたいところですが、これは人によってはNGになってしまう要素のためにあえて公表します。
まさかの結ばれるヒロインが一人じゃありませんでした!
いやこの作品どう見てもヒロインはソアラの一強じゃん!
それ以外想像できないじゃん!
ハーレムと言うほどではありませんが、この内容で結ばれる相手が一人じゃないとは流石に思いもよりませんでした。
まぁ僕個人はそれでマイナス評価にすることはありませんが、一夫一妻制に拘る人もいるかと思います。
ハーレム系は作品の内容からある程度予想できることが多いですが、この作品に関しては完全に予想外でしたので念のため気にする方はご注意を。
終わりに
魔物も魔法も登場しない戦記モノというのは中々爽快感が得られなくてライトノベルとしては人気を得るのが難しいジャンルだと思います。
そんな中でも『数字で救う! 弱小国家』はライトノベルらしい軽さとコンセプトに対する堅実さを感じられ、根強い人気があるように感じます(個人の感想です)。
異世界転移モノや戦記モノに抵抗のない人にはぜひ手に取ってみてもらいたいです。