【感想】董白伝~魔王令嬢から始める三国志~は丁寧で惹きこまれる転生物語

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かんたん評価

オススメ度:★★★★☆
毒舌が原因で仕事を失った元商社マンが、怪しい占い師の策略によって三国志で悪名轟かせる“魔王”董卓の孫娘、董白に転生してしまうお話。
よくある歴史改変ものですが、転生先が何の力も持たない少女である上に頼みの綱の三国志の知識はところどころ史実と違う部分があり、おまけに本来亡くなるはずの少女が生き残ることでズレは更に大きくなり…と、予想不能な展開にワクワクさせられます。
三国志の知識がなくても十分楽しめる非常に丁寧な作品なので、戦記ものが好きな人にはオススメです!

以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。

こんな作品

あらすじ

自身の毒舌が原因で仕事を辞めるはめになり、心を病んでしまった元商社マンの城川ささね。
ある日、謎の占い師に出会った彼は不思議な力によって意識を失ってしまう。

目覚めた彼を待っていたのは三国志の世界。しかも、その身体は悪名高き“魔王”董卓の孫娘、董白であった。
混乱状態の彼を出迎えたのは再びあの謎の占い師。その正体はなんと董卓の侍女・貂蝉。
彼女がささねを呼び出した理由は、天下統一によって乱世を鎮めるため。一方で何の力も持たない幼女の体で天下統一など無理だと拒否するささね。
ところが、史実によればじきに董卓は殺され、粛清によってその一族も処刑されてしまうことを思い出してしまう。

このまま何もしなければバッドエンドまっしぐら。
生き残るために中華圏からの脱出を謀るささねだったが、事態は少しずつ史実とは違う方向へ。
果たしてささねこと董白は天下統一を成し遂げるのか、それとも…。

登場人物

董白

元商社マン・城川ささねの転生先。
肉体に精神が引っ張られており、最早ただの幼女。
董卓の孫娘ということはわかっているが、どのような生涯を送ったかは歴史書にはほとんど何も残されていない。
特別な力は何一つ持っていないが、城川ささねの持つ知識と忠臣の力で生き残りの道を探っている。

貂蝉

ささねを三国時代に転生させることになった占い師にして、董卓の愛人。
色々秘密を抱えていそうだが、1巻では謎のまま。
三国志に登場するものの架空の人物だったらしいが、もしかすると本作でも…?

呂布

三国志最強の男の一人で、本作でもめちゃくちゃ強い!
ただし、史実では董卓暗殺の首謀者であり残念ながら敵。
チャラくてウザい。

李傕

董卓配下の武将にして董白のよき(?)理解者。
邪教崇拝をしているかなり危ない人。

馬超

勇猛な武将のはずだがまさかの女体化。
ついでに女の子好きという大変変態な人物にされてしまった。
本来の馬超ファンには申し訳ないがなかなかいいキャラをしている。
本作において董白が生き残るための重要人物。

ここがイチオシ

不遇から始まる転生

主人公の転生先は何の力も持たない幼女。
しかも、その祖父は暗殺されることがわかっている董卓という負け陣営。
更には粛清により一族もろとも始末されることがわかっているという絶望的状況。

転生系は何かと優遇されがちな展開が多い中、大変不遇な状況から始まるのが本作の特徴です。

しかも、主人公が転生してきてしまったせいか、それともそもそも違う世界なのか、史実とは異なる展開が続くために主人公の持つ三国志の知識も参考程度にしかなりません。
歴史の道しるべが無い中で、無力な幼女はどうやって生き残りの道を探していくのか、非常に先が気になります。

予備知識不要なわかりやすく丁寧な内容

三国志がテーマと言うと「三国志よく知らないしなー」なんて思う人は結構いるんじゃないでしょうか。
かく言う僕がそれで読むのを躊躇していたのですが、読んでみたら全くの杞憂でした。
見慣れぬ用語や人物が登場する度にどんな役割なのか、どんな人物だったのかをわかりやすく説明してくれます。

この説明が必要な情報を最小限で教えてくれるために話の流れを阻害することもなく大変読みやすい!

例えば宦官の説明はこんな感じ

宦官といえば、皇帝や王族の家族の世話をする特殊な召し使いのことだ。彼らは皇帝の妻や愛人たちがいる後宮で働くため、間違いを犯さないよう男性器を手術により切除されている。

こういうのって詳しい人ほどダラダラと説明してしまいがちなので、この簡潔さは素晴らしい。

流石に三国志が昔の中国の物語って程度の認識はあった方がいいでしょうが、恐らく知識ゼロでも楽しむことができます!
ていうか僕自身が「呂布はなんかすごく強かった人!」くらいの知識しか持っていないのに楽しめていますので。

ここがちょっと気になる

主人公の毒舌設定が活かしきれていない

本作の主人公には普段は礼儀正しく振舞えるけれど、精神的に追い詰められると口が悪くなるというか、攻撃的な口調になってしまうという厄介な体質を持っています。

この設定自体は別に構わないのですが、これが初めて発揮されるところが非常に微妙でして…。
毒を吐いているというよりはひたすら煽っているという感じで、しかもその煽りがあまり上手くないと言いますか…。

2回目以降の煽りはそんなに悪くないのですが、それはそれとしてこれもう口が悪いっていうより煽り癖があるって方が正しいんじゃないかとモヤモヤしました。

まぁちょっと難癖っぽくなってしまいましたが、逆に言うとこれくらいしかツッコミどころは無かったんじゃないかなと思います。

終わりに

一口に転生ものと言っても設定がちゃんとしているだけで物語への没入感が全然違うなぁと実感できました。
設定が良ければ面白いとは限りませんが、董白伝に関して言えば物語もしっかりと面白かったです!
まだ1巻のため物語的にはまだまだ序盤なので、今後の展開次第では評価が大きく変わってしまうと思いますが、今のところは超オススメの1冊!