【感想】天才王子の赤字国家再生術はゆる~い国家運営物語

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かんたん評価

オススメ度:★★★★☆
兵力に乏しく資源もない。そんな完全に詰んでいる状態の国家運営を任された王子が大国の属国になってさっさと隠居しようと画策するも、あれこれ裏目に出てなぜか国家運営が上手くいってしまうという物語。

“売国しよう”というタイトルのわりに国民のために政策を考えていたり、“天才王子”という割に天才的な発想によるものと言うよりは運とご都合展開によるものだったりと少々タイトル詐欺感はありますが、ゆるーく楽しむ作品としてはなかなか面白いと思います。

以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。

こんな作品

あらすじ

資源は無い、人材は無い、兵力も無い。そこに追加してなんと王までもが病に伏せてしまうという状況に。
そんな弱小国家ナトラ王国を突如背負うことになった若き王子ウェイン。
今のままではどこかの国に戦争を仕掛けられて終わってしまうと天才故に悟ったウェインは、国民の幸せ(と自身の隠居生活)を願って大国の属国となるべく奮闘する。
ところが事態は思いもよらぬ方向へ進んでしまい…。

登場人物

ウェイン

文武に秀でたナトラ王国の若き天才王子。
ただしやる気がないため楽な方へ楽な方へと物事を進めようとする。

ニニム

ウェインの側近の美少女で白い髪が特徴。
他国では差別対象であるフラム族だが、ナトラ王国では重宝され王族の者は側近に一人フラム族が配置されている。

フラーニャ

ウェインの妹でお兄ちゃん大好きっ子。
ウェインのような神算鬼謀の才能は持たない代わりに、圧倒的なアイドル性を持つ。

ここが魅力

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思い通りにいかない展開

物語の基本は天才王子であるウェインの策略によって思い描いた方向へ転がされるという主人公Sugeeeものかと思わせておきながら、実はそうではない物語。
まぁ人間そうそう思い通りに、というか利益や効率重視に動かないですよね。
人の心までは計算できないウェインの思惑はどこかで崩れて予想外の方向へ?!

単純に凄い主人公が凄いことやって終わり! ではつまらないですからね。
どんな方向へ転がってしまうのか、どんな結末を迎えてしまうのか。
先が予想つかないワクワク感が魅力の一つです。

わかりやすい

戦記ものとか政治系の内容を扱ったものというのはどうしてもその作戦や展開の“正しさ”を重要視されがちな傾向があります。
まぁ実際僕も自分の得意分野だと正しさが気になってしまいますし。

でも、実際に読んでいる大多数は専門家じゃないのでいくら正しくても難しい言葉を使われて理解できなかったら意味がないんですよね。
その点、この作品はかなりわかりやすい解説で“それらしい”内容を話してくれます。
本当に正しいのかは専門家ではない僕にはわかりませんが、確からしい内容とわかりやすい説明があって納得させてくれるのが一番良いのではないでしょうか。
その分シリアスさというか、深刻さは薄れてしまうのですが、内容が理解できないまま進んでいくよりははるかに良いですね。

ここがちょっと気になる

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イラストのキャラが描き分けられていない

イラストについては「じゃあお前描けるのかよ」と言われたらぐうの音も出ないことから言及は避けているのですが、今回についてはちょっとだけ。(いや、小説も書けないんだけど)

表紙とか扉絵とかのカラー絵を見ているときはあまり気にならないんですよ。
というか、非常に素敵なイラストだと思っています。
問題はモノクロ絵。
色が付いてないと誰が誰だかわからない!

他の作品でもそういう傾向でしたが、イラストレーターのファルまろさんという方は基本的にどのキャラも顔と体が一緒なんですよね。
そこに加えて髪型がロングとかで被ると、色が無ければほぼ見分けが付きません。
文脈から「たぶんこの挿絵はこのキャラの絵なんだろうなぁ」と推測することはできますが、確信を持てないくらいにはなんだか似たり寄ったりな造形になってしまっています。

終わりに

ということで天才王子によって傾きかけた王国を再建していく物語でした。
天才がしっかり書けているかと言われるとちょっと疑問が残りますが、ゆる~く楽しむ分には笑いとシリアスの配分が丁度良く、ストレス無く楽しめる作品になっているかと思います。