【感想】失格から始める成り上がり魔導師道!はこの作品ならではの工夫が光る作品

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かんたん評価

オススメ度:★★★★☆
魔力量が少ないからと子爵家を廃嫡されてしまったアークスは、ある日、日本という国で過ごしたとある男の一生分の夢を見る。偶然にも異世界の知識を得たアークスは、その知識を使って両親を見返すべく成り上がる物語。
現代知識があるからと安易に無双したり作ったりするわけではなく、いろいろな制限の中で工夫していくストーリーが魅力的な作品!



以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。

こんな作品

あらすじ

魔導師として軍に貢献してきた由緒ある子爵家・レイセフト家に生まれたアークスは、しかし、貴族としては非常に少ない魔力量であったためにわずか6歳にして廃嫡されてしまう。魔力を増やせないかと身体を酷使してみるも効果はなく、体力尽き気絶した彼は長い長い夢を見た。
それは、日本という国で暮らすとある男の一生を追体験するかのような夢。

夢から覚めた彼を待っていたのは、自分を邪魔者のように扱う両親だった。
あまりの扱いに両親との仲を復帰させることは不可能と悟ったアークスは、魔力が少ないなりに立派な魔導師になって見返してやろうと決心し、国定魔導師であり伯父でもあるクレイブに弟子入りを願い出る。
夢の男の知識を取り入れ、魔力が少ないなりにかつてない魔法でアークスは成り上がりを目指す!

登場人物

アークス・レイセフト

性別は男だが女の子のような顔の上に中々身長が伸びないのがコンプレックス。
レイセフト家の長男だったが、凡人クラスの魔力しか持たない。
廃嫡をきっかけにして日本のとある男の夢を見ることになり、この世界にはない科学知識を活用したオリジナル魔法を生み出す。

クレイブ・アーベント

アークスの伯父であり12人しかいない国定魔導師の一人。二つ名は【溶鉄】
レイセフト家の長男であったにも関わらずアークスの父親であるジョシュアの方が魔力量が多かったために家督を譲ることになってしまったが、クレイブの方が魔術師として大成してしまった。

スウ

どこかの貴族の令嬢。
魔法に対する好奇心がとても強く、独自の魔法を開発していくアークスと一緒に勉強する仲になる。
王家にしか知られていない古代アーツ語にも精通しているようだが、果たしてその正体は…?

ノア・イングヴェイン

元クレイブの従者にして現アークスの従者。
王立魔法院を首席で卒業した優等生で、氷結魔法の使い手にして細剣術も達者。

ここが魅力

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制限のある中で成り上がる過程が楽しい

この作品の魅力は何と言っても非常に上手いバランスで現代知識を活躍させているところでしょう。
新しいモノを作ったり今までにない魔法を作ったりと主人公ならではの大活躍があるわけですが、それで主人公が無双できるわけでもなく、少ない魔力なりに工夫していく感じが大変面白いです。

特に限られた言葉から目的の現象を突き詰めていく感じはまるで化学の実験のようで楽しいですね。

単純な転生ではないところに面白さがある

ぱっと見は異世界転生モノに見える本作ですが厳密には違って、あくまで主人公アークスは“とある日本人の人生を夢で体験した”だけであるというところです。

何が違うの? と思うかもしれませんが、かなり違います。
その日本人男とアークスの魂が同一のものかどうかは作中で明言されていないので不明ですが、アークスにとって出身地はこの世界であり、両親はレイセフト家であるということです。
よくある転生モノでは逆に新しい両親を他人のように見ている節があるため、真逆ですね。

で、これが物語にどんな影響があるかと言えばアークスはこの世界に愛着があり、そして自分を生んでくれた上に一時期は愛されていた両親に勘当されるという悲劇に会うわけです。
その衝撃は一般的な異世界転生モノとは比較にならないのはわかってもらえるでしょう。

また、実際に前世を過ごしてきたわけではなく、あくまで夢で見ただけでアークスが実際に生きた人生はあくまで子供相応な歳だということです。
だから同い年の友人とつるむことに違和感を感じないし、年相応に傷つくこともあります。

一見すると些細な違いですが、物語を楽しむ上では大きく影響してきますし、そのアクセントが作品の魅力を引き立てているように感じます。

ここがちょっと気になる

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キャラデザがコレジャナイ

これはweb版を読んでいたファンでも比較的多くみられた意見ですが、全体的にキャラデザのコレジャナイ感がすごいです。
アークスは女の子に“間違われるような見た目”と描写されているにも関わらず普通に男の子ですし、妹のリーシャの服装はバレリーナかなんかのようだし…。
従者のノアは服装は想像通りだったけどキャラは女性向けに出てきそうな感じだし…。
特にコレジャナイと感じたのは伯父のクレイブで、伯父ってよりその辺のにーちゃんじゃん!っていう。
まぁこれは僕個人の好みと違ったという話ではあるのですが、どうしても評価を下げざるを得ませんでした。

web版との違いについて

webで無料公開されているものをわざわざ高いお金を払って購入する価値があるのか、これから読もうという人にとっては気になるところですよね。

1巻に関してはweb版とそれほど大きな違いはありません。
とは言え使用する魔法が異なっていたり文章に修正が入っていたりと細かいところでブラッシュアップされています。
それに加えて書き下ろしのエピソードが一つ追加されています。
具体的にはノアがクレイブの従者になるきっかけのお話ですね。まさかこんな過去があったとは…という意外なお話になります。

2巻ではweb版と大幅に変わっており、約半分が書き下ろし版となっています。
また、これによって出会うキャラや起きるイベントに違いが生じたため、3巻以降大きく異なっていくんじゃないかなと思われます。
これから読むのであれば書籍版を読むことをオススメします。

終わりに

なろうでよくある異世界ファンタジーではありますが、その完成度は非常に高く、ストーリーもかなりワクワクするものがあります!
惜しむらくはキャラデザがいまいちな点ですが…そこは割り切るしかないですね。

願わくばこのまま続巻が出てくれることを。