【感想】千歳くんはラムネ瓶のなかは新しい主人公の風を吹かすか

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2019年10月19日更新


かんたん評価

オススメ度:★★★☆☆

  • こんな作品

  • 学内カーストトップのイケメンリア充主人公が学内で起きている厄介ごとを解決させられるお話


  • ここが面白い

  • ・リア充側から見た視点という珍しい試み
    ・意外と熱い主人公


  • ここがちょっと気になる

  • ・登場キャラが高校生っぽくない
    ・2巻でも健太が出てきてしまった


    一応ネタバレには気を付けて記事を書いていますが、全くないとは言えないのでそのあたりご注意ください。


    チラムネってこんな作品

    主人公は、超絶リア充。

    『五組の千歳朔はヤリチン糞野郎』

    学校裏サイトで叩かれながらも、藤志高校のトップカーストに君臨するリア充・千歳朔。
    彼のまわりには、外見も中身も優れた友人たちがいつも集まっている。

    圧倒的姫オーラの正妻ポジション・柊夕湖。
    努力型の後天的リア充・内田優空。
    バスケ部エースの元気娘・青海陽……。

    仲間たちと楽しく新クラスをスタートさせたのも束の間、朔はとある引きこもり生徒の更生を頼まれる。
    これは、彼のリア充ハーレム物語か、それとも――?


    イケメンで頭もよくて運動神経も抜群。女の子にモテモテな主人公・朔。
    2年生になって新しくなった彼のクラスにはいつもの仲の良いメンツに加えて更に美少女が加わり、今まで以上に華やかなグループに。
    一方そんな彼のクラスには新学年の始まる少し前から不登校になった男子生徒がいる。
    担任にその生徒のことを頼まれてしまった朔は、更生の手段を検討するが…。


    カーストとかリア充という言葉が大好きなガガガ文庫。
    そんなガガガから新しく出た本書はまさかのカーストトップの完璧リア充主人公でした!


    誤解を恐れずに言うなら、本書は『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』の主人公を完璧リア充に変えたような作品です。
    「担任から与えられたミッションを自分なりにクリアしていく」という展開は俺ガイルの奉仕部に近いでしょう。
    まぁ似ているのはそれくらいなので「全然違うよ!」とか言われたらぐうの音も出ませんが…。


    1巻に限定すれば「カースト底辺のオタク少年をプロデュースする」という内容はどちらかと言えば『弱キャラ友崎くん』の逆バージョンのように感じるかもしれません。
    ただ、オタク少年プロデュースは1巻だけだし、どちらかというと安易なリア充成り上がりへのアンチテーゼ的な立ち位置に感じます。(そこまで考えていないかな?)

    1巻のメインが健太という引きこもり少年のお話なので、ラブコメっぽさはほとんどありませんが、2巻になるとヒロインの一人、七瀬悠月の物語になるため、ようやくラブコメらしさが始まります。

    ストーカー被害に合っている悠月を助けるべく、偽の恋人を演じる朔。
    しかし、一向に収まらない悠月の身に起こる事件。
    果たしてその犯人とは!?
    チーム千歳のメンバーもようやく活躍するようになります。


    ここが面白い

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    リア充側から見た視点という珍しい主人公

    容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群で女の子にモテモテ、そんなパーフェクトでスクールカーストトップの主人公・朔。
    最早読者に嫌われるために作ったんじゃないかという設定で、誰もが羨む立場。

    主人公は平凡だとか普通だとかがありがちなラノベでは非常に珍しいですよね。


    しかし、当然ながらそんな立場の人間に向けられるものは綺麗なものばかりではなくて。
    それを端的に表しているのが裏表紙や公式のあらすじにも書かれている『五組の千歳朔はヤリチン糞野郎』という文言。

    ちょこちょこカーストトップの負の面が出てくる中で、それでもあえて完璧であろうとする朔。それは何かの決意なのか、あるいは彼を縛る呪いなのか。
    重要なのは、彼は“完璧である”から誰かを救っているのではなく、“完璧でなければならない”と思っているところですね。
    これによりただの嫌味な主人公でもデウスエクスマキナでもなく、彼もまた何かを解決してあげなければならないキャラの一人にしています。


    意外と熱い主人公

    本作の冒頭を読む限りでは厄介ごとはさらりと躱し、およそ高校生が欲しいものをほとんど手に入れているような描写のある朔。
    そんな彼に当初僕が抱いていたのはなんか子供とは思えないほど達観してんなーという印象。


    ところが読み進めていくと、本来であれば学校に連れて来るだけでよかった引きこもり少年を更生させ、しかもわざわざランニングに付き合ったりするなど面倒を見だす始末。

    おや? 意外と人情味溢れるキャラなのかな?


    そして終盤では…!(ネタバレにつき規制)


    と、そんな感じで読み進めていくについてれこの作品の主人公結構熱いな! という印象に変わっていきます。

    こんな感じで今後もわざわざ面倒なことに自分から首を突っ込んでいくのかなと思うと面白そうです。


    そう、ひねくれものが多い(誉め言葉)ラノベ作家が、ただのいけ好かないリア充主人公なんて書くわけがないんだ!

    チラムネのここがちょっと気になる

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    登場キャラが高校生っぽくない

    全部のキャラが…というわけではないのですが、少なくとも主要キャラであるチーム千歳からは高校生らしさというものが欠けているように思います。

    全体的に賢過ぎるし物分かりも良過ぎるんですよ。
    主人公の朔だけならまだしも、他のキャラも異様に理性的だし。
    また、抱えている悩みも年相応ではないというか。
    とても高校生のラブコメを読んでいる気分にはなりません。


    まぁ、この辺りの調整は難しいところではあるんですよね。
    あまり子供っぽくしてしまうとあまりの馬鹿さ加減に読者はイライラしてしまいますし。
    良い子ちゃん揃いだから安心して読めることを良しとするか、高校生っぽい青臭さが無くて残念と取るか。

    2巻でも登場してしまう健太

    誤解のないように言っておくと、僕はこの作品に登場する健太というキャラが好きです。
    1巻でのメインキャラであり、リア充爆発しろと訴えていた引きこもりオタク。
    そんな彼も朔のおかげでいくらか変わることができ、なかなか個性的で良いキャラになりました。

    そんな彼が2巻でも登場してしまいます!

    いや、登場するのは別にいいんですよ。個人的には好きだし、一切出ない方がむしろ不自然だし。

    でもさぁ、チーム千歳にいるのはおかしくない!?

    彼の居場所はカーストトップではなく、あくまでオタクグループのはず!
    1巻のイベントを経て変わった彼が朔たちと普通に会話をしているのは全然良いのですが、一緒に行動しているとなるとそれはちょっとおかしいでしょう。

    裕夢先生1巻で書いてたこと忘れちゃってるのかな…。

    終わりに

    芯のところでは変わりありませんが、1巻と2巻では話の傾向はかなり変わりました。
    2巻にてようやく主人公の情報が少しだけ開示されましたが、なぜこれほど完璧を志すようになったかはまだまだ不明。
    果たして彼の考えとは。そして、彼は本当の恋をすることができるのか。

    1巻では独特な印象のあるチラムネですが、正直2巻では平凡なラブコメになってしまったなーという感じが否めません。
    3巻で巻き返せるか。