【感想】七つの魔剣が支配するはどこかで見たことのある設定の学園ファンタジー

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かんたん評価

オススメ度:★★☆☆☆

  • こんな作品

  • とある英国にある名門魔法学校キンバリーが舞台。
    自身の悲願のためにキンバリーに入学したオリバーを待っていたのは、個性豊かな友人と狂気を帯びた教師や上級生。そして世界に6つしかないはずの魔剣を扱う7人目の使い手であるサムライ少女ナナオ。
    オリバーの学園生活はどうなるのか。果たして彼の悲願は叶うのか。


  • 作品の特徴

  • ・ハリポタに剣をぶち込んだ世界観
    ・常に既視感に襲われる展開
    ・ストーリーはオリジナル


  • 一言

  • 常に「これどこかで見たな」という印象が拭えないですが、そうした既視感をスルー出来れば王道学園ファンタジーとして楽しめると思います。


    以下、ややネタバレがありますのでご注意ください。

    こんな作品

    あらすじ

    春―。名門キンバリー魔法学校に、今年も新入生がやってくる。黒いローブを身に纏い、腰に白杖と杖剣を一振りずつ。胸には誇りと使命を秘めて。そんな魔法使いの卵たちを迎えるのは、桜の舞う満開街道と魔法生物たちのパレード。が、希望に胸躍らせるのも束の間。キンバリーの孕む数々の脅威が彼らに襲い掛かる。気まぐれに生徒を飲み込む地下迷宮、怪物じみた上級生たち、亜人種の人権を巡る派閥の対立―。そんな魔境を仲間と生き抜く中、オリバーは一人の少女と縁を結ぶ。腰に日本刀を提げたサムライ少女―ナナオ。二人の魔剣を巡る物語が、今、始まる。

    かつて偉大な魔法使いの一人であった親を亡くしたハリーは、とある目的を果たすために魔法学校の名門キンバリーに新入生として入学した。
    キンバリーの名物、入学式のパレードではロン、ハーマイオニー、ネビル、ジニーと出会い仲良くなる。
    平和に思えた入学式だったが、突如パレードにいたトロールが暴れだし、ジニーを襲う!
    ジニーを救うべく動き出したハリー達だったが、そこに同じく新入生の剣士、ナナオが助太刀に入り、事なきを得る。

    希望に満ち溢れていると思われていたキンバリー魔法学校だったが、実は数々の脅威と非常識に満ち溢れていた。
    魔法で再生できるからとケガすら問わない危険な授業、魔に近付き過ぎて呑まれてしまう学生、魔物が現れる迷宮。

    ハリーは己の目的を無事果たせるのか!?


    うんうん、よくできたハリー・ポッターの同人小説だね。


    え? これオリジナルの商業本!?


    こんなに似せていて大丈夫なの? 登場人物から小ネタまでほとんどハリー・ポッターだけど。


    魔法や授業、学内にいるしゃべる植物、時間を飛ばす魔剣、ハリポタ要素がかなり強めだけど、それ以外にもどこかで見たような設定の数々が読者を襲います。

    これこそ新しい時代のキングオブオマージュノベル!

    ここが面白い

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    懐かしの王道学園ファンタジー

    ボーイミーツガールがあって剣と魔法のバトルがあって、そして主人公や学園には隠された秘密があって…。
    そんな一昔前はありふれていた王道の学園ファンタジーがここにはあります。
    ちょっと前はこういう作品がたくさんあったんですけどね。

    仲間と協力して問題を解決していく…というには極一部のキャラ以外が1巻時点で既に戦力外状態なのが気になりますが、たまにはこういう王道の学園ものも良いですよね。

    ここがちょっと気になる

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    いたるとこに既視感が強すぎる

    王道なんだから仕方ないという面もありますが、それを加味してもあまりに既視感が強い『七つの魔剣が支配する』という作品。

    多くの人が感じているようですが、ハリポタ要素がめちゃくちゃあります。
    学校の設備から授業の内容、魔法生物や魔法の設定まで明らかに意識しているのがわかります。というか作者自身が公言しているようなので今さらですが。

    ただ、その要素は設定に収まらず、箒に乗ったスポーツなど学内イベントやストーリーにも表れています。
    正直これをオマージュと言っていいのか…。少なくともオリジナリティは感じられません。


    既視感があるのはハリポタ要素に限りません。
    11eyes -罪と罰と贖いの少女-に登場した『劫の眼』や、Typemoonの『魔法・青』っぽいものなど、その作品ならではの独自性の強い設定まで登場させるのは流石に自重した方がいいんじゃないかと。
    この分だと作品の要であるはずの七つの魔剣は全部他作品からの引用になりそうです。


    同人小説と考えたら完成度は高いですが、商業本として出されると流石にオリジナリティが欠如しているかな。

    設定が噛み合っていない

    数々の作品から様々な要素を引用した本作。
    あまりにもそのまま引用してしまうために案の定というか、それぞれの要素がこれでもかと噛み合っていません。

    魔法学校の話なのに最終的に勝敗を決するのは剣の腕次第
    ”魔剣”を使えることが絶対的な強さを誇る世界なせいでハリポタ的な友人キャラを登場させるも魔剣を使えない者は極一部を除いて1巻にして既に空気。

    復讐のための物語とハリポタ的な学園仲良し成長譚を混ぜたせいで主人公が二重人格。

    “ある間合いに入られたら剣士に対して魔法使いは無力”という設定もハリポタ風詠唱ほぼ無し魔法のせいで台無し。

    魔法と魔剣は関係ありそうで全然関係ないのに魔法使いの最高峰が魔剣使い。そして魔剣と言いながら剣が全然関係ないその効果。


    このように他作品そのままパク…引っ張ってきたせいで設定にどうも統一感が見られません。
    全く違う作品の要素を上手く組み合わせて新しい価値を出す、というところまで出来ればそれは十分オリジナリティと言えるでしょう。
    しかし、本作はただただ他作品の要素を継ぎ接ぎにしただけという印象です。


    ところで本作って魔剣がタイトルになってる割に物語上あんまし関係ないよね。

    終わりに

    今までに幅広い作品に手を出している人ほどパクリ要素が気になって本編どころじゃなくなるんじゃないでしょうか。
    最近の作品しか知らない若い人なんかは純粋に楽しめるかもしれませんが。

    何にせよ、オリジナル作品であるならばもう少し頑張ってほしいなー。