【感想】ひきこまり吸血鬼の悶々はギャグとシリアスをくっつけた作品

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かんたん評価

オススメ度:★☆☆☆☆

とある事件をきっかけにひきこもりになった1億人に1人の美少女が、父親と皇帝の策略によって将軍になってしまい、他国との戦争に引きずり出される物語。

将軍として働かないと死んでしまう契約を結ばされてしまったので嫌々働く一方で実は死んでも簡単に復活できるゆるゆる世界だったり、弱いと思っていたら実は隠された力があったり、ギャグ路線かと思いきや唐突にシリアス路線に入ったりとなんかぐちゃぐちゃな作品。
GA文庫大賞の優秀賞にあまりこんなこと言うのはどうかと思うけれど何が面白いのかわからなかったです。

以下、極力ネタバレを避けていますが、全くないわけではないのでご注意ください。

こんな作品

あらすじ

名門吸血鬼の家系に生まれながら血が飲めないために体は小さく身体能力も低いというダメダメ少女コマリは、いじめが原因で3年間も引きこもりになってしまった。
ところがある日、父親の余計な気遣いによってコマリは戦の経験も無いのに将軍の一人に抜擢されてしまう。

無能であることがバレてしまっては部下たちから下剋上されてしまい殺されかねない。
弱者であることを見抜かれないようにコマリはメイドのヴィルと共に小細工を労していくのだが…。

登場人物

コマリ

本作の主人公。
吸血鬼なのに血が飲めず、体が小さい、運動能力無し、頭も悪いと良いところなし。
挿絵を見れば一発でわかるが、実は強いというオチ。

ヴィル

コマリ付きのメイド。
昔コマリに助けられた恩があり慕っている。
変態その1。

皇帝陛下

年齢不詳の美少女で、コマリの母親が好きだったらしい。
変態その2。


ここが魅力

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絵のクオリティが全体的に高い

ラノベは表紙は綺麗なのに中を読み進めていくと凄い手抜きな挿絵が入っていることが稀によくありますが、この作品においてはその心配はいりません。
元々同人活動でモノクロのマンガを描いているからでしょうか。表紙やカラーイラストはイラストレーターらしい描き方なのに対してモノクロの挿絵はマンガ的な描き方がされていてそれぞれの良さが出ています。

ここがちょっと気になる

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世界観が足を引っ張っている

この世界では頻繁に戦争が行われているのですが、魔核なる便利オブジェクトの存在により死んでも何度でも蘇ることができるというゆるゆる世界観になっています。

コメディ作品なのでこれくらいゆるい設定があっても全然かまわないのですが、問題はそれが作品の足かせにしかなっていないということです。

主人公コマリが引きこもりから脱却する原因となるのが「将軍として成果を上げないと腹に刻まれた契約の紋様が爆発して死ぬ」という契約を結ばされたからなのですが、上記の通り死んでも復活する世界なので全く強制力になっていません。
少なくとも「例え世界がひっくり返っても引きこもる!」と宣言する引きこもりが心変わりするにはあまりにも薄すぎます。
また、部下に舐められると下剋上されてこれまた殺される恐れがあるため、強者に見えるよう色々と努力(?)をするのですが、これまた死んでも復活する世界なので全然大した理由じゃなくなってしまっています。

ここまででもだいぶ足を引っ張っているのですが、ここから更に酷なことに。
なんとシリアス展開にするために魔核の効果を無効化して死んでも復活できないようにする武器が登場してしまいます。

え、1巻でそんなの出しちゃうの!?
だったら最初から復活できる設定無くてよかったんじゃね?

コメディに振りきれないプライドが見え隠れする

公式からの宣伝ではコメディがメインのように書かれていますが、実際に読んでみるとコメディ部分は作中の半分くらいで、もう半分はコマリが引きこもりになった原因とか敵キャラの辛い過去話といったシリアス側に思いっきり舵を切ってしまっています。

お話の構成が上手ければそれが作品の魅力になった可能性もありますが、残念ながらあまりに唐突な展開な上にその中心キャラも唐突に出現したキャラなので話に引き込まれるものがありません。
おまけにその内容も非常にありきたりな内容なので正直「ふーん」という感じです。

あとがきを見るに“女の子可愛い”を書いた方が人気出るとわかっていても、そこに本当に書きたいことも混ぜてしまったという感じでしょうか。
正直中途半端という感じが否めないので、萌えで行くのかストーリー重視で行くのかどちらかに振ってほしかったですね。
少なくとも現時点で両方を一つにまとめる能力は作者にないと感じました。

終わりに

だいたい★1つの作品って不快感が強くて読むだけでイライラする作品というのが多いのですが、この作品に関して言えば不快感はそれほどない代わりに恐ろしくつまらないという作品でした。
新人賞にも関わらず何も尖っていない作品というのは…。